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商標法と意匠法が一部改正、「個人使用目的」の模倣品輸入にも対応知財ニュース

日本弁理士会は2021年7月13日、海外からの模倣品流入対策などを強化した「特許法等の一部を改正する法律」に関する説明会を開催した。商標法や意匠法における「輸入」行為の定義が更新されたことで、模倣品の水際対策がより効果的に実施できる可能性がある。

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 日本弁理士会は2021年7月13日、海外からの模倣品流入対策などを強化した「特許法等の一部を改正する法律」(同年5月21日公布、施行日は公布日より1年6カ月以内)に関する説明会を開催した。商標法や意匠法における「輸入」行為の定義が更新されたことで、模倣品の水際対策がより効果的に実施できる可能性がある。

「個人使用目的の輸入」にどう対応するか

 近年、知的財産への侵害が疑われる輸入品の“小口化”が加速している。財務省が公開するデータによると、輸入差し止め件数に対する差し止め点数は減少傾向にある。日本弁理士会 貿易円滑化委員長の萩原賢典氏は「減少の背景にはEコマースの一般化などがある。模倣品を取り扱う海外事業者が日本国内の個人に少量の模倣品を直接送付する事例が増加した」と分析する。


「業として」輸入された貨物のみが対象※出典:日本弁理士会[クリックして拡大]

 これに伴い問題化しているのが、模倣品が税関を通過するケースの増加である。

 税関では、輸入品が知的財産を侵害しているかを判定する「認定手続」を行う。ただ、認定手続は「業として」行われる輸入品、つまり、企業などの事業者が輸入した貨物に対して行われるものであり、輸入者が「個人使用目的の範囲内」で輸入した貨物は対象外である。これは、特許権や実用新案権、意匠権、商標権などの産業財産権に関する法律が、元来、事業者の公正な競争を通じて産業界を発展させることを目的に制定されたものだからだ。


「業として」輸入された貨物のみが対象※出典:日本弁理士会[クリックして拡大]

 萩原氏は「こうした制度の仕組みを逆手にとって、模倣品を『個人使用目的の輸入である』と仮装して、海外事業者が小口かつ高頻度で輸出する事例が増えているといわれている。実務上、『個人使用目的』という主張への反証は困難である上、小口化によって対応すべき件数が増えており、税関の事務負担は増大している。模倣品の国内流通を防止するには水際対策が重要だ。しかし、結果的に水際対策をすり抜ける模倣品も多いと推測されており、このままでは税関が持つ水際対策の機能が低下する恐れがあった」と説明した。

輸入の定義を追加

 こうした課題を解決し得る内容を含むのが、2021年5月21日に公布された「特許法等の一部を改正する法律」だ。模倣品流入対策という観点から見ると、重要な改正点は、これまで商標法や意匠法に存在しなかった「輸入の定義」を追加したことにある。

 具体的には、商標法の第2条第7項と意匠法の第2条第1号が新設、改正された。商標法第2条第7項では「この法律において、輸入する行為には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれるものとする」と定められた。また、意匠法第2条第1号では、意匠の「実施」に関する定義の文言中で「輸入」について、「外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む」という説明が追加されている。


改正法の解説※出典:日本弁理士会[クリックして拡大]

 これによって、海外から国内への模倣品の送付行為は、貨物が税関に到着した時点で「(模倣品を送付した)海外の事業者からの輸入行為」と捉えられるようになる。「個人の使用目的の輸入」と主張がなされた場合でも、模倣品を「外国の事業者による商標権と意匠権の侵害行為」と認定できる可能性が高まった。

 萩原氏は「実務的には今後議論を深めるべき箇所もある。例えば、認定手続の開始などを海外の事業者にも通知する必要があるのか、あるいは省略できるのか。また、権利の侵害者とならない立場の個人にも意見表明の機会が与えられるのかなど、動向に注目したい」と語った。

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