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「失われたものを取り戻す」パナソニック楠見新社長が求めるトヨタ式現場力製造マネジメント インタビュー(4/4 ページ)

2021年4月にパナソニックのCEOに就任し、同年6月に代表取締役 社長執行役員となった楠見雄規氏が報道陣の合同インタビューに応じ、事業会社制の狙いや2年間のオペレーション力強化への取り組み、パナソニックの強みなどについて説明した。

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事業会社制となっても持ち株会社で技術開発を継続

―― 事業会社化における技術開発体制についてはどう考えるか。ホールディングス会社と事業会社のすみ分けをどう考えるのか。

楠見氏 基本的には技術開発を事業に近いところで行う「技術開発の前線化」という考え方は変わらない。以前のデジタルAVを主力とした時期はデジタル技術そのものが大きな進化をしておりその技術開発のリソースを本社で抱えていた時期があったが、これらがコモディティ化する中で本社側から事業部側に開発を移管していった。今は本社で受け持つ技術開発の比率は小さくなっている。

 事業会社として生まれる各企業もそれほど小さな規模ではなく個々でも技術開発を行うリソースは保持している。全社としてホールディングス会社で行うものと、事業会社で行うものを切り分けながら、進めていく。例えば「社会をどう変えていくのか」を見据えた中長期の取り組みで、事業会社個々で行うのが難しい領域の研究開発はホールディングス会社で行うというような考え方だ。

「環境」への取り組みにもブルーヨンダー買収は貢献

―― 環境対策を強化する方針を示しているが、ブルーヨンダー(Blue Yonder)の買収についてもこの動きに関係する動きになるのか。

楠見氏 「環境」への取り組みでは、ブルーヨンダーだけではないが、見える化などや画像認識やAIを活用した新たな情報収集の仕組みは育てていくべきところだと考えている。こうした技術とブルーヨンダーの見える化ソリューションを組み合わせることで、企業として環境負荷の見える化なども実現できる。

 環境問題への対応があらゆる形で求められるようになる中、その情報を一元的に把握するということは、今後の企業の大きなテーマになってくると考えている。だからこそ、買収費用は高くても(買収総額は71億ドル)もやる価値があると考えた。短期で投資費用を回収するというよりも、今後の変化に取り組んでいくためにも必要だった。

―― テスラ株を2020年度(2021年3月期)中に売却したが、テスラとの関係に変化はあるのか。また、売却益の使い道として、ブルーヨンダーの買収があったのか。

楠見氏 株を売却したといってもテスラとの関係が悪くなるわけではない。当然だがテスラに確認を取りながら手放している。パナソニックとしてテスラにとって貢献できることが何かを考えた場合、最も重要なのは、テスラの電気自動車(EV)に役立つ電池を供給することに尽きる。当初はIT分野でも一般的に使用されており、安価で品質も安定していた18650(直径18×長さ65mm)電池を提供することがその役割だったが、EVそのものが新たな進化を遂げる中で電池についても新たな形が求められるようになっている。それが今は4680(直径46×長さ80mm)という形に進んでいるところで、この開発にはパナソニックも取り組んでいるところだ。競争力のある電池を提供することが何より重要だと考えている。

 また、ブルーヨンダーの件と、テスラ株については明確な関係はない。ただ、必要となるキャッシュの裏付けという点においては、判断の手助けをしたということはいえるかもしれない。

中国・北東アジア社の力をグローバルに展開

―― パナソニックは地域別セグメントで売上高を見ると日本の比率が高く、欧米はまだまだ低い。また中国も歴史の割に比率は高くない。日本の人口減少が今後続く中でこうした状況に危機感はないのか。

楠見氏 まさに2019年4月に中国・北東アジア社を設立したのは、その課題解決のためだ。中国のように変化のスピードが速く、コスト力が要求される市場で戦う力を作り上げていくには、日本中心で考えていては無理だ。そこで中国市場向けの組織を独立させることにした。これは、中国に長年進出し蓄積してきた資源があるからできたことだ。

 この2年間で中国市場に合わせたスピード感やコスト力を身に付けており、中国の商戦期でも成果を実感できる“手触り感”が出てきた。ここで身に付けた力は中国市場のためだけではなく、グローバルで展開するきっかけにもなる。日本やアジア、欧米でもこれらの強みを活用した製品展開を進める他、民生分野以外でも活用できると考えている。

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