eSIMを超える「iSIM」に取り組むソラコム、あらゆるネットワークから接続可能に:製造業IoT(2/2 ページ)
ソラコムは、オンラインで開催中の年次ユーザーイベント「Discovery 2021 ONLINE」の基調講演において、新サービスとなる「SORACOM Arc」や、SIMカードの機能をセルラーSoC内に集積する「iSIM」など、同社の最新の取り組みについて紹介した。
「アーク放電のようにこれまでつながっていなかったモノをつなげる」
一方、SORACOM Arcは、セルラー通信やSigfox、LoRaWANといった閉域網接続を特徴とするSORACOM Airの利用が前提になっていた同社の各種プラットフォームサービスについて、一般的なWi-Fiや有線通信、衛星通信などのIPネットワークからも利用可能にするセキュアリンクサービスである。
これまでソラコムの各種プラットフォームサービスは、SORACOM Airによるクライアントの認証と安全な通信路の提供をベースに展開してきた。IoTサービスの開発にかかる期間の短縮や大規模なIoTシステムの効率的な管理が可能なことから高い評価を得ていたが、ユーザーからは「Wi-Fiや有線通信で接続しているデバイスでもリモートアクセスが使いたい」「普段はLTEでいいが、データ保存・蓄積サービスにデータを送るときなどにWi-Fiを使いたい」「クラウド連携サービスを使いたいがLTE圏外だったので諦めた」といった声も寄せられていた。
そこで、どんな通信回線上でもソラコムプラットフォームにつながるセキュアなリンクを作れるように開発したのがSORACOM Arcである。仕組みとしては、ソラコムプラットフォームから仮想SIM(vSIM)をユーザーに発行し、ユーザーがWi-Fiや有線通信などのネットワークに接続するIoTデバイスに仮想SIMの認証情報を設定した後、ソラコムプラットフォームとIoTデバイスの間で仮想SIMで認証された安全な通信路を確立する。この認証と安全な通信路の確立では、最新の暗号化技術を利用するオープンソースのVPN(仮想プライベートネットワーク)実装である「WireGuard」を用いている。
SORACOM Arcでは、LTEとWi-Fiの両方の無線通信機能を持つようなIoTデバイスへの対応も想定している。SORACOM AirのSIMカードやeSIMに仮想SIMをひも付けることで、ソラコムのプラットフォームサービスを利用中にLTEとWi-Fiの通信を切り替えた場合にも、これらのサービスを透過的に利用できるようになっている。
なお、IoTデバイス側でSORACOM Arcの利用を可能にするためのエージェントプログラム「soratun(ソラタン)」も提供する。コマンドラインベースのsoratunを用いることで、WireGuardの仮想ネットワークインタフェースを作成できるという。
ソラコム CTOの安川健太氏は「アーク(Arc)放電のようにこれまでつながっていなかったモノとソラコムプラットフォームとの間にリンクを確立できる。SORACOM Arcの投入により、ソラコムはあらゆるネットワークから接続可能なIoTプラットフォームになった」と語る。
SORACOM Arcの価格(税込み)は、仮想SIM作成手数料となる初期費用は55円、基本料金はSORACOM AirのSIMとひも付ける場合で1カ月当たり55円、仮想SIMを単独で作成した場合で1カ月当たり88円(それぞれ1GBの通信料を含む)。また、ソラコムプラットフォームへのデータ通信料金は1仮想SIM/通信量1GB当たり22円となっている。また、ソラコムプラットフォームユーザーに対して、SORACOM Arcの毎月1仮想SIM分の基本料金とデータ通信量1GB、1オペレーター当たり1仮想SIMの初期費用が無償になる利用枠が提供される。
これらの他、国内向けのNTTドコモ回線を用いるSORACOM Airサービスの新料金プランとなる「plan-D D-300MB」や、サブスクリプションコンテナでサブスクリプションを追加する際の基本料金の値下げ、初回対応時間のSLA(サービス保証)付きの「プライオリティサポート」などによる有償サポートの提供、通信のトラブルシューティングを自動実行する無償の診断機能の追加なども発表している。
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