しかし、オンラインだからこそ平等に目が触れるといういい面もあるかもしれません。実際の会場では、入り口から近いかどうか、ブースが大きいかどうか、アイキャッチになる派手さがあるかどうかなど、さまざまな要因によって来訪者が立ち寄るかどうかが決まってしまいます。また、1社のブースの中でもパネルなどの見せ方によっては気付かれにくい展示もでてくるかもしれません。
オンラインの人テク展では、出展社を一覧で見てみると表示の順番の差こそあれ同じ大きさでアイコンが並びます。出展社のページに行っても、全ての展示が同じ大きさで並びます。文字と画像だけを追うのも退屈するので、動画があればとりあえず一通り動画を見てみようか、という気持ちにもなりました。この流れで回遊するからこそ見つけられる情報もあるかもしれません。そんなメリットを考えたのは、偶然たどり着いた日野自動車のダカールラリーの動画がとても面白かったからです。
日野がダカールラリーに長年出場していることや、ダカールラリーが過酷であることは一般常識として知っていましたが、日野レンジャーがどんなふうに砂漠を越えていくのかまでは見たことがありませんでした。また、2021年1月に開催されたダカールラリーでは、砂丘を乗り越えたレンジャーが真っ逆さまにひっくり返ってしまう場面があったことを動画で初めて知りました。完走率が7割に満たないことも動画で知りました。走行に問題はなかったとはいえ、ひっくり返って1度は大破したボディーで完走したレンジャーのタフさに、物知らずで大変はずかしながら感動しました。道なき道を走って無事に帰ってこられるという価値は、この先も不変ですよね。かっこいいなあと思いました。
ヤマハ子会社が手取り足取りの開発受託
もう1つオンラインの人テク展で見つけた面白い動画は、ヤマハモーターエンジニアリングです。ヤマハ発動機の完全子会社で、バイク、船舶用エンジン、無人ヘリコプターや産業用ドローン、救助に使われる消防用品などを開発しています。その実績とノウハウを生かした陸・海・空の電動モビリティの開発受託を行なっていることを動画では紹介しています。
モビリティを使った実証実験をしたいけれど、モビリティを自社で開発・生産するのが難しい会社向けに、製品企画から製品評価までをサポートします。開発テーマの設定の仕方、要求品質を満たせる開発の進め方、モデルベース開発を活用した検証などまで一緒にやってくれるそうです。モビリティのIoT(モノのインターネット)化まで手掛けてくれるとか。
動画では、開発受託のサービスと同じ流れで開発した小さな電動オフロードバイク「BiBeey」についても紹介されています。BiBeeyの完成までの流れと同じきめ細かさで手伝ってもらえるとしたら、「実はやってみたいことがあったんだよね」という会社や人が一歩踏み出せそうです。また、モビリティ開発に不慣れだけれどもやりたいことや欲しいものが明確な人たちが、信頼性が高くて現実的なモビリティを手に入れられるのはとてもいいことだと思います。モビリティ開発に不慣れな自分たちだけで闇雲に苦労するよりも、モビリティを使ってやりたいことに目を向けたい人や会社も一定数いるのではないでしょうか。
もし、これが横浜の会場で、置いてあるBiBeeyを見かけただけでは足を止めなかったかもしれません。なんのバイクなのかと思いつつ、パネルに目を向けないまま通り過ぎた可能性があります。いい動画を見つけたぞ、と少し嬉しくなりました。実際の会場で開催される人テク展に行けないのは残念ですが、嘆くばかりでなく、貪欲に探し回る好奇心はオンラインでも忘れずに持っておきたいと思いました。
今週はこんな記事を公開しました
- つながるクルマキーマンインタビュー
- 製造マネジメントニュース
- 車載半導体
- モビリティサービス
- 編集後記
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