JIS規定と異なる試験を25年間実施、日本軽金属がアルミ板製品で検査不正:品質不正問題
日本軽金属ホールディングスは、中核子会社の日本軽金属が名古屋工場で生産するアルミ板製品の検査において1996年ごろから不正があったことが判明したと発表。同工場はJIS認証を取得していたが、認証機関であるJQAによる臨時認証維持審査の結果、重大な基準違反があるとしてJIS認証が取り消された。
日本軽金属ホールディングスは2021年5月17日、中核子会社の日本軽金属が名古屋工場(愛知県稲沢市)で生産するアルミ板製品の検査において1996年ごろから不正があったことが判明したと発表した。同工場はJIS(日本産業規格)認証を取得していたが、JISの認証機関であるJQA(日本品質保証機構)による臨時認証維持審査(2021年4月22〜23日)の結果、重大な基準違反があるとして同年5月14日付で名古屋工場のJIS認証取り消しが行われ、日本軽金属に通知されたという。
現時点で判明している不適切行為は2つある。1つは、名古屋工場のアルミ板製品の引張試験の試験片を採取する際、厚さ6.5mm以上で非熱処理合金の板製品においてJISが規定する「圧延方向に対して平行」という方法とは異なる、「圧延方向に対して直角」で試験片を採取し引張試験を実施し、このアルミ板製品にJISマークを付けて継続的に出荷していた。この不正は1996年ごろから行われていた。
もう1つは、2020年2月に実施したJQAの更新審査において、更新審査用のアルミ板製品の試験片採取を行う際に、先述のような検査不正の実態を偽り、その時だけJISの規定に沿った方法で試験片採取を行ったことである。
日本軽金属ホールディングスは、2021年5月17日付で設置したJIS認証違反調査委員会(委員長:同社 取締役副社長執行役員 製品安全・品質保証統括室長の村上敏英氏)の下で、検査不正に関する徹底した全容解明と原因究明、再発防止策の策定を行う方針だ。グループ会社のJIS認証を受けている全拠点でも総点検を開始しており、完了次第速やかにその結果を発表するとしている。
なお、名古屋工場のアルミ板製品はJISマーク表示製品として販売はできないものの、「既に緊急是正措置としてJIS規定に沿った試験方法への改定は完了しており、また性能的にはJIS規格相当の製品を提供することは可能と判断している。速やかに顧客および多くの関係先に対して連絡と説明を行い、誠心誠意対応していく」(同社)という。
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