住友重機械が不適切検査の調査報告書を公表、外部有識者は調査に参加せず:製造マネジメントニュース
住友重機械工業は2019年3月28日、同年1月に発表した不適切検査について調査報告書と再発防止策を発表した。
住友重機械工業は2019年3月28日、同年1月に発表した不適切検査について調査報告書と再発防止策を発表した。
同報告書内で、子会社の住友重機械ハイマテックスが製鎖製品と表面処理製品で不適切検査を行っていたことも新たに明らかにした。製鎖製品の不適切検査は2019年2月に発覚し、耐力検査が未実施にもかかわらず検査結果を良としていたことや引張試験で顧客仕様から外れた数値を仕様内の数値に改ざんしていた。影響を受けた顧客は2社で、対象製品はチェーン548連と水中接続金具1325個。
表面処理製品の不適切検査は、製鎖製品の不適切検査発覚後に改めて実施した検査記録表と生データの照合で判明した。寸法検査において図面の公差から外れた場合に検査データを改ざんしていたことや、超音波探傷検査が未実施だったにもかかわらず検査成績書にねつ造した検査結果を記載していた。影響を受けた顧客は9社で、対象製品数は1068本。
外部有識者の参加がなかった調査委員会
2019年1月の同事案公表時、調査主体である「特別調査委員会」の独立性に疑問の声が上がっていた*)。同委員会の委員長は社外取締役とするが、委員は社外監査役の他、同社取締役、執行役員、部門長で構成。同委員会に外部有識者の参加はなく、調査対象と利害関係のない外部調査委員会や第三者調査委員会による調査としなかった。
※) 関連記事:住友重機械で不適切検査、半導体製造装置部品や大型減速機が対象
この人選について、同報告書は「当社の多角化した事業展開とそれに伴う多方面にわたるリスク、事業特性等を踏まえた原因究明と実効性の高い再発防止策策定に繋げるため、本社取締役・執行役員・本社部門長を副委員長およびその他委員とした」と説明する。
一方で、同じく広範な事業領域で不適切検査が発覚した日立化成は弁護士や外部専門家などで構成した調査委員会から調査を受けた。また、その他の外部調査委員会から再発防止策について提言を受けた企業も複数ある中で、住友重機械工業が受けた調査は果たして独立、公平、徹底的だったのか。ディスクロージャー(情報開示)の視点からも疑問が残る。
また、同報告書では同社グループで発生した不適切検査の共通原因として「製品・サービスに関する要求事項(法令、仕様)の軽視」「不適切な検査等を許す品質管理プロセスの不備」「業務品質の管理・監督体制の脆弱さ」「サービス品質の確保に向けた体制や取り組みの不備」「現場任せでバランスを欠いた事業運営・組織運営」「コンプライアンス最優先の経営方針の不徹底」などを挙げた。しかし、ヒアリング調査に基づく事案関係者の生の声が記載されておらず、どのような動機や背景で不適切検査が実施されたのか読み取ることは難しい。
同社は特別調査委員会の報告を受け、再発防止策として「住友の事業精神と経営理念の再確認と再徹底」「トップおよび経営幹部による業務品質改善、コンプライアンス最優先の経営方針の徹底についてのリーダーシップ発揮」「品質管理プロセスの強化」「業務品質の本社ガバナンス体制の強化」「バランスの取れた事業運営・組織運営の推進」などを実施するとしている。
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