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インタビュー

品質管理は新たな段階に移行すべき――コト売り時代の品質リスクを防げ製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)

モノ売りからコト売りへの提供価値の変化、不適切検査に代表される品質不正問題の相次ぐ発覚など、激動の時代を迎えている日本製造業。製造業が抱えるリスクとは何か。品質管理における現状の課題や解決の道筋を宮村氏に聞いた。

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 「製品がネットワークに接続し、機能アップデートが出荷後も続くIoT(モノのインターネット)の時代、工程・ライン別に区切られている従来の品質管理だけでは“リスク”に対応できない。従来の品質管理に加え、横串を通したリスクマネジメントで自社のビジネス環境を検討することが重要だ」

 PwCあらた有限責任監査法人でリスクアシュアランス部門 パートナーを務める宮村和谷氏は日本製造業の品質保証の在り方に警鐘を鳴らす。宮村氏はクライアントに対して、組織的リスク対応力、危機からのリカバリー支援、プロセスやシステム、データに関するレジリエンス強化などのアドバイザリー業務を担当。製造業企業においても豊富なコンサルティング経験を持つ。

 モノ売りからコト売りへの提供価値の変化、不適切検査に代表される品質不正問題の相次ぐ発覚など、激動の時代を迎えている日本製造業。製造業が抱えるリスクとは何か。品質管理における現状の課題や解決の道筋を宮村氏に聞いた。


PwCあらた有限責任監査法人の宮村和谷氏

品質不正と会計不正はほぼ同じ基本構造、不正が起こる現場の特徴

 2016年6月、神戸製鋼グループで発覚したステンレス鋼線のJIS規格不適合問題。同事案が口火を切り、現在に至るまでさまざまな製造業企業で不適切検査という企業不祥事が横行していたことが明らかとなった。企業が犯す不祥事には会計不正も含まれるが、宮村氏は「品質不正と会計不正は不正を犯す関係者や原因要素で異なるが、『不正のトライアングル』でみると基本構造は同じ」との見方を示す。

 不正のトライアングルは企業が経済犯罪を犯す要因を類型化したもの。米国の犯罪学者ドナルド・クレッシー氏は以下の3要因を提唱し、これらが全てそろったときに不正が起こり得ると論じた。

  • 不正を働く「動機やプレッシャー」
  • 不正を可能にする「機会」
  • 不正行為を正当な業務とごまかす「正当化」

不正のトライアングルのイメージ。各要素の数値は不正発生に対して、どの要因がどの程度寄与したかという調査結果に基づく 出典:PwC

 不適切な品質管理を発生させ、それを見逃すことは製造業企業にとって企業信用や財務に大きな悪影響を及ぼす。これまでに判明した不適切検査の事案は故意に不正を行ったケースもあれば、過失によって発生したケースもある。宮村氏は「実際に発生した一連の品質不正を分析すると、単一の原因で発生した事案はない。一部では技能伝承の失敗など過失要因による事案もある」と分析する。

 その上で、「日本の製造業は品質第一を掲げているが、現場では指さし確認やダブルチェックなど完全に人任せで属人化がはびこる企業が多い。また、その現場も定められたことを愚直にやり通す真面目な気質だが、製品出荷時の品質にフォーカスし継続的な製品の価値に関わるリスク全般を取り扱っていないケースが多い」(宮村氏)と製造現場における課題を説明した。

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