環境負荷が高いアパレル産業だからこそ目指す持続可能性、5つの観点とは:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
ファッションワールド東京(2021年3月23〜25日、東京ビッグサイト)では「第1回 国際サステナブルファッションEXPO」が開催されたが、その中で日鉄物産 事業開発部 部長の木下祥一氏が登壇。「サプライチェーン全体で取り組みます!日鉄物産の『COCOROSUS』について」をテーマとし、同社が取り組むサプライチェーン全体で取り組む原材料循環の取り組みについて紹介した。
製品、素材加工、原材料、ブランドまで広がるサステナビリティの輪
国際サステナブルファッションEXPOでも、COCOROSUSのループを提案した。素材から生地、加工、製品、リサイクルに至るまでを一貫したサプライチェーンを示した。
例えば、紹介した製品の1つとして「PLANT DYE」がある。これは、進化した草木染である。植物の染料はもともと色が変わりやすく、現在の品質基準に合致しないものが多いが、特許取得済みの天然染料などに超音波技術を組み合わせることで進化させ、有害な化学物質、重金属、塩素などを使わずに、高レベルの耐変色性を実現した。また、水の消費量を大幅に削減できる。カラーバリエーションも豊富にあるなど製品面での魅力もあり、従来の化学染色に対するサステナブルな代替として期待されているという。
素材加工では非フッ素の撥水加工「kamala」を紹介した。植物由来の薬剤を使用することでフッ素を使用せず、地球環境にやさしいという特性を持つ。非フッ素撥水加工は、業界の注目技術の1つで用いるところも増えているが、「kamala」は撥水機能とともにドライクリーニング対応機能なども備えており、ポリエステルなどの合成繊維や綿に加工することもできる点が特徴である。
製品ではウールの天然繊維「RWS(Responsible wool standard)」の活用を訴えている。RWSは、羊およびその育つ土地が大切に扱われ、原毛が生地になるまでの過程全てが、それを守っていることが保証/証明される国際的な認証で、全ての製造工程で審査と認証を受けることでRWSに認定される。同社は2020年にRWSの認証を取得しており、持続可能性のある羊毛活用を広げている。
ファッションジャンルでは、スウェーデンのサステナブルファッションブランド「DEDICATED.」とのライセンス契約を2020年9月に締結した。「DEDICATED.」は、2006年に誕生したスウェーデンのブランドで、英語で「身をささげた、専門の」という意味を持つ。地球や地域の産業の持続可能性に身をささげて注力するという誓いを表している。原料を育てる人から、生地を縫い合わせる人、またそれらの工場や農場がある地域の周辺の環境も汚さないこと、全ての人たちに公平であること、責任を持つことを目指している。また、地球環境や人権に配慮した倫理的なモノづくりをブランド設立時から行っており、環境への取り組みについて非常に多くのノウハウを持つ。ブランドの全ての製品にはオーガニックコットンをはじめとする環境負荷の低い素材が採用されている。
リサイクルに関しては廃棄衣料から作られるリサイクル糸の独自ブランド「BRiCO」(ブリコ)の販売を開始。インドの紡績会社が製造するリサイクル糸を、多様なアイテムに向け提案する。回収した古着を粉砕する前に色や素材で仕分けする手法で、染色なしでもカラー展開ができる付加価値も訴求し、サステナブルファッションの需要を掘り起こす。ブリコは「コットン」「ウールブレンド」「デニム」の3カテゴリーに分けて提案を進める。
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