自動車メーカーが8.2秒で伝えるガラスの魅力、「真面目禁止」でJAIDとAGCが協創:「8.2秒展」レポート(3/3 ページ)
国内自動車メーカーに所属するカーデザイナーが参画するJAIDとAGCは、デザイナーらによるクリエイティビティと、AGCが保有する先端材料・技術を融合させたアート展「8.2秒展」を開催(会期:2021年3月23日〜6月19日)。100以上のアイデアから厳選した6社7作品をAGCの未来創造スペース「AGC Studio」で展示している。
【5】ガラスの花:いすゞ自動車
いすゞ自動車は、ガラスと触れ合い、素材としての面白さを体験できるガラスを主役にした作品「ガラスの花」を出品した。つぼみから開花までをイメージしたガラス製の花にはサンドブラスト加工などが施されており、光を与えることで美しい花のシルエットが浮かび上がる作品。熱反射ガラス(ハーフミラー)を用いた合わせ鏡により、光の茎が伸びたように見える。ガラス製の花を持ち上げると光が消え、元に戻すと再び光り出す、触れて楽しめる演出を通じて、ガラスの美しさや表情の変化を感じ取ることができる。
この作品で使われているAGCの技術
ミラー、熱反射ガラス(ハーフミラー)、リヒート型成形、電磁遮蔽(しゃへい)ガラス、クリアサイト、サンドブラスト、ガラス成形
【6】Glass Camp:トヨタ自動車(2)
トヨタ自動車の2つ目の作品は、本来は硬くて冷たいガラスが、見る人の心を優しく温める存在にもなり得るという可能性を追求したガラスのたき火「Glass Camp」だ。薪に使われているのがAGCの分相ガラス。白い光を当てるとガラスの中でレイリー散乱を生じて、ガラスの薪の内部から発熱しているように赤く色付く。ガラス表面も本物の薪を3Dスキャンして得たテクスチャーを施した。その際の型として、AGCの3Dプリンタ用セラミックス造形材「Brightorb」を使用。つるされたガラススピーカーからは、実際にガラスを割ったときの音を用いて“パチパチ”と薪が燃える音が聞こえ、薪をうちわであおぐとガラス内部の赤色が強まったり、弱まったりと変化する凝った演出も確認できる。
この作品で使われているAGCの技術
分相ガラス、ガラス振動板(スピーカー)、3Dプリンタ用セラミックス造形材「Brightorb」
【7】空気清浄木:ホンダ
ホンダの作品は「空気清浄木」だ。コロナ禍でさまざまな制約や我慢が強いられ、先の見えない息苦しさやモヤモヤとした気分が漂う世の中に対して、「空気感を浄化する体験」を提供したいという思いから生まれた作品。展示ブースの天井に設置された回転式の照明からは、赤色を基調にしたランダムな光が壁に投影され、ゆがみを持たせたガラス製の照明カバーによって不安を煽られるような雰囲気が作り出されている。そして、ブース中央に垂らされた1本のひもを引くことで、“8.2秒”の浄化体験が味わえる。工業製品ではあり得ないような不規則性やゆがみをあえて取り入れることで、見事な空間演出を実現している。
この作品で使われているAGCの技術
3Dプリンタ、ガラス表面パターニング、ガラス成形、光学パターニング
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 変わりゆくクルマのインテリア、JAID「1kg展」の3Dプリント作品が示すその先
国内自動車メーカー7社のインテリアデザイナーが参加するJAIDが2019年1月12〜25日にかけて3Dプリント作品の展示会「1kg展」を開催した。CASE時代を迎え、人とクルマの間にあるインタフェースでもあるインテリアは、エクステリア以上に大きく変わろうとしている。1kg展ではどのようなインテリアの未来が示されたのだろうか。 - 自動車の内装デザイナーが3Dプリンタで1kgの価値を創造、JAID「1kg展」開幕
国内自動車メーカーのインテリアデザイナーやCMF(色、素材、加工)デザイナーが参画するJAID(ジャイド)が、2019年1月12〜25日の2週間、東京都内で3Dプリント作品の展示会「1kg展」を開催中だ。 - AGCが新研究開発棟でオープンイノベーションを加速、JAIDとのコラボも進行中
AGCは、AGC横浜テクニカルセンター(YTC)内に建設していた新研究開発棟の完成を発表するともに、同研究棟内に開設した社内外の協創を加速させる協創空間「AO(アオ)」を報道陣に公開した。YTCにAGCの研究開発機能を集約するとともに、社内外の協創を推進するスペースを併設することでオープンイノベーションも加速させたい考えだ。 - AGC、素材開発のスピードアップに向けて専用アプリ不要の簡単AR技術の試験使用を開始
AGCは、素材の組成開発を担う材料融合研究所と素材の生産プロセスおよび設備開発を担う生産技術部において、AR(拡張現実)/MR(複合現実)技術を保有するKAKUCHOの「webAR」の試験使用を開始すると発表した。 - 車いすをカッコいい乗り物に! 既成概念を打ち破る「WHILL」のデザイン思想
「全ての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションに掲げ、誰もが乗りたいと思えるパーソナルモビリティを手掛けるWHILLの平田泰大氏に、歴代「WHILL」の変遷を踏まえながら、デザインに込められた思いや、各世代でどのようなチャレンジが行われたのかを詳しく聞いた。 - 愛する力を育むロボット「LOVOT」に命を吹き込むデザインの力【前編】
GROOVE Xが満を持して発表した家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」。どうしても、その機能や性能に目が行きがちだが、LOVOTという“愛らしい存在”を創り出すデザインの力についても注目したい。LOVOTのデザインを担当したznug designの根津孝太氏に話を聞いた。