寒波や地震の中でも4社が前年超え、2021年2月の新車グローバル生産:自動車メーカー生産動向(2/2 ページ)
2021年2月の自動車生産は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が与えた影響からの回復が鮮明となる一方で、半導体の供給不足に加えて、地震や寒波など相次いで発生した自然災害が水を差す格好となった。
スズキ
スズキの2月のグローバル生産は、前年同月比6.7%増の27万1036台と2カ月ぶりのプラスだった。グローバル生産の半数以上を占めるインドは同19.3%増と2カ月ぶりに増加し、販売・生産ともに2月の過去最高を更新した。その結果、海外生産は同11.0%増の19万5767台と2カ月ぶりのプラスとなった。ただ、シェア6割を握るミャンマーでのクーデターによる生産停止のほか、インドネシア、パキスタン、タイなどもマイナスで、インド以外の地域は同22.2%減と低迷している。
国内生産は前年同月比3.0%減の7万5269台と2カ月連続で減少した。残業や休日出勤を見直すなど半導体不足の影響が一部出ているが、2月の時点では生産停止までは至っていない。販売自体は「スペーシア」「ハスラー」「ソリオ」「ジムニー」などが好調で、国内販売は8カ月連続でプラスを維持している。
マツダ
マツダの2月のグローバル生産台数は、前年同月比3.9%減の9万6024台と4カ月連続で減少した。なお、マツダでは半導体の供給不足により2月はグローバル生産で約6000台の減産影響があったとしており、半導体の影響を除けば前年実績を上回っていたとみられる。国内生産は同4.9%減の7万2633台で2カ月連続のマイナス。登録車の国内販売が減少したほか、輸出もオセアニア向けは同74.6%増と伸びたものの、主要市場である北米向けが同21.5%減、欧州向けが同40.3%減と大きく台数を落とした。生産車種の内訳では「マツダ3」「CX-5」「CX-30」など主力モデルが2桁%減となった。
海外生産は前年同月比0.8%減の2万3391台と4カ月連続の減少。中国は、前年同月のCOVID-19感染拡大に対する反動で同791.3%増と急伸した。一方、メキシコはマツダ3や「マツダ2」の需要減や寒波による4日間の操業停止などにより同45.6%減と低迷。タイはマツダ2や「CX-3」の増加により同6.1%増だった。
ダイハツ
ダイハツの2月のグローバル生産台数は、前年同月比5.2%減の13万5504台と2カ月連続で減少した。国内生産は前年同月比1.2%減の8万5678台と2カ月連続の前年割れ。軽自動車は同5.1%増と3カ月連続でプラスを維持したが、「ロッキー」とトヨタ向けにOEM供給する「ライズ」の新型車効果が一巡したことから、登録車生産は同11.5%減と4カ月連続のマイナスとなった。
東南アジアの厳しい市場環境を表しているのが海外生産で、同11.4%減の4万9826台と12カ月連続のマイナス。ただ、減少幅は1月より3.4ポイント改善した。とはいえインドネシアは同13.7%減と依然として2桁%減の状況で、回復基調を示していたマレーシアも1月に続きマイナスとなるなど、本格回復にはまだしばらく時間を要することになりそうだ。
三菱自
東南アジアのビジネスボリュームの大きい三菱自も厳しい状況が続いている。2月のグローバル生産は前年同月比12.6%減の8万8754台と18カ月連続の減少となった。減少幅は1月より3.2ポイント改善した。国内生産は同0.4%減の4万8312台で11カ月連続のマイナスだが、減少幅は1月から20.6ポイント改善するなど大幅な回復を見せた。要因は「eKスペース」の新型車効果や「エクリプスクロス」のプラグインハイブリッド車の純増に加えて、主力モデルの「デリカD:5」の販売が同62.0%増と好調で、国内生産をけん引した。
一方、海外生産は前年同月比23.8%減の4万442台と17カ月連続のマイナス。徐々に回復基調を示していたが、2月は減少幅が1月比で12.3ポイント悪化した。これは主力拠点のタイが同27.3%減と落ち込んだことが主因。タイは東南アジアの中でも比較的回復が進んでいるものの、減少幅が1月比で16.5ポイント悪化した2月の状況を見ると、改めて東南アジアの自動車市場の厳しい様子が伺える。なお、中国は他社同様に同459.2%増と大きく回復した。
スバル
8社の中でも半導体不足の影響が深刻なのがスバルだ。1月から国内および米国工場で継続的に生産調整を続けており、2月のグローバル生産台数は前年同月比31.7%減の6万2371台と2カ月連続の前年割れとなった。減少幅も1月から2.5ポイント悪化した。国内外で受注が好調にもかかわらず、生産台数は他社に比べて大幅なマイナスとなっており、影響の深刻さを物語っている。国内生産は同34.2%減の3万8137台と2カ月連続の減少。海外生産も同27.3%減の2万4234台と2カ月連続のマイナスとなった。
なお、スバルは半導体の供給不足により3月までにグローバル生産で4万8000台減産する見通しを示している。さらに4月は、10日から27日の期間において群馬製作所矢島工場で操業を停止することも発表しており、今後しばらくは低水準な生産が続くことが予想される。
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