寒波や地震の中でも4社が前年超え、2021年2月の新車グローバル生産:自動車メーカー生産動向(1/2 ページ)
2021年2月の自動車生産は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が与えた影響からの回復が鮮明となる一方で、半導体の供給不足に加えて、地震や寒波など相次いで発生した自然災害が水を差す格好となった。
2021年2月の自動車生産は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が与えた影響からの回復が鮮明となる一方で、半導体の供給不足に加えて、地震や寒波など相次いで発生した自然災害が水を差す格好となった。
日系乗用車メーカー8社が発表した2月のグローバル生産実績は、中国など海外市場の好調を受けて、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、スズキの上位4社が前年実績を上回った。しかし、半導体不足や福島県沖地震の影響が広がる国内生産は日産を除く7社が前年割れ。その中でもホンダとSUBARU(スバル)は前年同月比で3割を超える減産を余儀なくされた。半導体は、コロナ禍での需要拡大によって世界的に広がる供給不足に加えて、今後は3月19日に発生したルネサス エレクトロニクスの工場火災による影響も表面化することが予測される。日系自動車メーカー各社は3月以降、さらなる減産に踏み切る可能性も高い。
国内 | 海外 | (うち北米) | (うち中国) | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
トヨタ | 244,048 | 423,953 | 142,233 | 89,488 | 668,001 |
▲ 7.5 | 17.1 | ▲ 5.7 | 484.5 | 6.8 | |
ホンダ | 47,158 | 271,674 | 121,237 | 90,819 | 318,832 |
▲ 33.6 | 24.5 | ▲ 16.8 | 1493.3 | 10.2 | |
日産 | 55,516 | 243,267 | 87,474 | 75,604 | 298,783 |
7.4 | 11.4 | ▲ 22.6 | 876.8 | 10.6 | |
スズキ | 75,269 | 195,767 | - | - | 271,036 |
▲ 3.0 | 11.0 | - | - | 6.7 | |
ダイハツ | 85,678 | 49,826 | - | - | 135,504 |
▲ 1.2 | ▲ 11.4 | - | - | ▲ 5.2 | |
マツダ | 72,633 | 23,391 | 9,303 | 8,200 | 96,024 |
▲ 4.9 | ▲ 0.8 | ▲ 45.6 | 791.3 | ▲ 3.9 | |
三菱自 | 48,312 | 40,442 | - | 1,342 | 88,754 |
▲ 0.4 | ▲ 23.8 | - | 459.2 | ▲ 12.6 | |
スバル | 38,137 | 24,234 | 24,234 | - | 62,371 |
▲ 34.2 | ▲ 27.3 | ▲ 27.3 | - | ▲ 31.7 | |
合計 | 666,751 | 1,272,554 | 384,481 | 265,453 | 1,939,305 |
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、% ※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計 |
グローバルの自動車市場は、COVID-19感染拡大から着実に回復傾向を示しており、2月の世界販売はダイハツ工業、三菱自動車、スバルを除く5社がプラスを確保した。中でも2020年2月がCOVID-19感染拡大で経済活動が事実上ストップしていた中国は、各社ともに数倍の伸び率を記録した。一方で、東南アジアは依然として市場低迷が続いており、生産面においても同エリアでのビジネスボリュームが大きいダイハツと三菱自の足を引っ張る格好となっている。
なお、半導体の供給不足の影響は、2月の時点では販売面への影響は軽微なものの、生産では既に国内外ともに相応の影響が及んでいる。主に国内と北米で減産に踏み切るメーカーが多く、特にホンダやスバルは前年比で3割減と大幅な落ち込みを余儀なくされている状況だ。さらに国内では福島県沖地震の発生、米国では寒波による稼働停止など、2月は相次ぐ自然災害も減産要因となった。
トヨタ
メーカー別に見ると、トヨタの2月のグローバル生産台数は、前年同月比6.8%増の66万8001台と6カ月連続で増加した。海外生産は同17.1%増の42万3953台と6カ月連続のプラス。地域別では、主力市場の北米は「ハイランダーハイブリッド」などの販売が好調だったものの、寒波の影響により一部工場で稼働を停止したため、同5.7%減と3カ月ぶりに減少へ転じた。
アジアは、前年同月比71.6%増と6カ月連続の増加。前年がCOVID-19感染拡大で急減した中国が同484.5%増と大きく上昇した結果、インドネシアやフィリピン、ベトナムの低迷を補う形となった。タイ(同15.2%増)やマレーシア(同32.5%増)も好調だった。欧州では、フランスで前年同月に新型「ヤリス」への切り替えによる減産が発生したことからプラスを確保した他、英国が増産対応で前年超えとなったものの、欧州全体ではロックダウンの影響により同3.5%減と伸び悩んでいる。
海外生産が好調な一方、国内生産は前年同月比7.5%減の24万4048台と2カ月連続のマイナスだった。国内市場向け「ハリアー」「ヤリス」といった新型車の販売好調は続いているものの、2月13日に発生した福島県沖地震で、サスペンション部品を供給する日立アステモの福島工場が被災。これによりトヨタは国内の9工場14ラインを対象に、17日から24日まで稼働停止などの生産調整を実施した。
ホンダ
大手自動車メーカーの中でも半導体不足の影響が顕著なのがホンダだ。2月のグローバル生産台数は前年同月比10.2%増の31万8832台と2カ月ぶりのプラスとなったものの、国内生産は同33.6%減の4万7158台と2カ月連続の2桁%減で、減少幅も1月より15.6ポイント悪化した。半導体不足により、鈴鹿製作所で生産する主力モデルの「N-BOX」や「フィット」を減産している。加えて国内販売も不調で、新型車効果の反動減が表れたフィットやモデル末期の「ヴェゼル」「フリード」などが大幅減となった他、最量販車種のN-BOXもマイナーチェンジでテコ入れした直後にもかかわらず前年割れと伸び悩んだ。輸出も同73.6%減と低迷。北米向けが同90.4%減、台数ボリュームの大きな欧州向けも同78.0%減と厳しい状況が続いている。
海外生産は、前年同月比24.5%増の27万1674台と2カ月ぶりのプラス。要因は主力市場の中国で、前年同月がCOVID-19感染拡大で急減したため前年実績に比べて約16倍となり、9カ月連続で増加した。その結果、アジアトータルでも同156.4%増と急伸し、8カ月連続で増加した。一方、北米は、半導体不足や寒波、港湾での物流の混乱などが重なり生産調整を実施した結果、同16.8%減と2カ月連続で前年実績を下回った。このうち米国は同22.1%減と2カ月連続のマイナスだった。欧州は同2.3%減と3カ月連続で減少したが、減少幅は1月より35.0ポイント改善した。
日産
日産の2月のグローバル生産は、同10.6%増の29万8783台と3カ月連続で前年実績を上回った。このうち国内生産は同7.4%増の5万5516台と25カ月ぶりにプラスへ転じた。8社のうち国内生産がプラスとなったのは日産のみ。福島県沖地震による部品調達への影響で追浜工場などを2日間稼働停止したマイナス要因もあったが、北米向けの新型「ローグ」が好調で2月の北米向け輸出が同46.8%増と大きく伸長し、国内生産をけん引した。ただ、2020年末に発売した国内市場の戦略モデルである「ノート」は、受注は好調ながら納期が長期化するなど足元では半導体不足の影響が表面化しており、今後の国内生産には不透明な部分も多い。
海外生産も好調で、前年同月比11.4%増の24万3267台と3カ月連続のプラス。寒波などの影響を受けた北米は同22.6%減と大きく減らしたものの、最大市場の中国は前年同月がCOVID-19感染拡大による市場低迷期だったことにより同876.8%増と大幅増を記録し、5カ月連続のプラスだった。欧州は英国が同21.1%減、スペインが同42.1%減と依然として厳しい事業環境が続いている。
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