電動モビリティなどのリチウムイオンバッテリー向け信頼性試験設備をULが増強:研究開発の最前線
UL Japanは2021年4月8日、中型防爆槽などの電動モビリティなどに搭載する高容量リチウムイオンバッテリーの信頼性試験用設備を三重県伊勢市の本社に増設したと発表した。電動モビリティなどを対象としたリチウムイオンバッテリーの信頼性試験ニーズに対応する。
UL Japanは2021年4月8日、電動モビリティなどに搭載する高容量リチウムイオンバッテリーの信頼性試験用設備を三重県伊勢市の本社に増設したと発表した。中型防爆槽などの新設備を導入することで、拡大する電動モビリティなどを対象としたリチウムイオンバッテリーの信頼性試験ニーズに対応する狙いがある。
電動モビリティ向けの試験設備導入
現在、脱炭素社会の実現を目指す政治的、経済的動向を背景に、リチウムイオンバッテリーは電動アシスト自転車などの電動モビリティや家電製品を中心にニーズを拡大し続けている。同時に、リチウムイオンバッテリーの高容量化、高密度化に向けた研究開発などの取り組みも進む。ただ、高容量化や高密度化はバッテリーの爆発、延焼リスクなどを高めることにもつながる。このため、防爆槽などリチウムイオンバッテリー向けの信頼性試験用設備のニーズが高まっている。
こうした動向に合わせて、UL Japanでは高容量、高密度のリチウムイオンバッテリー試験に対応した中型防爆槽を2台導入した。これまでUL Japanでは民生品向けの小型バッテリー試験設備のみを使用していたが、新設備導入によって電動モビリティや産業/住宅用バッテリーセルなども試験可能となった。バッテリーセルは50Ahまで、バッテリーパックは300Ahまで対応可能。この他、槽内に設置するための多目的加圧試験装置も併せて導入する。
中型防爆槽では耐類焼試験や外部短絡試験、過充電/過放電試験を行える。多目的加圧試験装置を使用することで強制内部短絡試験や、平板/半球体/半円柱での圧壊試験、くぎ刺し試験などの各種破壊試験を行える。荷重は0.1〜2.0kNまでは0.1kN単位で、2〜20kNでは1kN単位で調整可能。速度は毎秒0.1〜150mmの間で設定できる。サーモグラフィーを使用することで防爆槽外部から試験の様子を確認可能だ。
これらの試験設備に加えて、同じく新たに導入した振動/衝撃試験機をはじめ、内部抵抗測定器や複合腐食試験、耐塵(じん)試験設備などを組み合わせて顧客の試験ニーズに応えるとともに、認証取得まで支援する包括的な試験サービスを提供する。
リチウムイオンバッテリーの試験ニーズの高まりについて、UL Japan Consumer,Medical&Information Technologies 事業部長の松岡雅子氏は「現在、電動モビリティ向けの研究開発は、民生用の小型バッテリーや自動車、産業用バッテリーと共に国内で非常に活発に行われている。最近では、物流領域の課題として注目されるラストワンマイル問題の解決に向けて、マイクロモビリティの導入が各所で検討されている他、電動車いすやドローンなど従来存在しなかった電動モビリティ製品が市場に増えてきている。これに合わせる形で信頼性試験ニーズは今後も拡大していくだろう」と語った。
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