需要伸びる車載機器の信頼性試験、ULが3億円投じ試験ラボを新設:車載電子部品(1/2 ページ)
第三者機関認証サービスなどを提供するUL Japanは2019年4月5日、同社伊勢本社(三重県伊勢市)に新設した「信頼性試験ラボ」を報道陣に公開した。同施設は同月8日から稼働を開始し、車載機器に特化した信頼性試験サービスを提供する。
第三者機関認証サービスなどを提供するUL Japanは2019年4月5日、同社伊勢本社(三重県伊勢市)に新設した「信頼性試験ラボ」を報道陣に公開した。同施設は同月8日から稼働を開始し、車載機器に特化した信頼性試験サービスを提供する。
需要伸びる車載機器の信頼性試験
UL Japanが新たに車載機器専門の信頼性試験施設を設置した背景には、自動車のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)の進展がある。自動車に多くの電装品が搭載されるようになった中で、「自動車メーカーの品質保証に対する考え方が幅広くなり、安全の概念が変わってきた」(同社コンシューマーテクノロジー事業部 事業部長 橋爪正人氏)という。
そのような状況で、多くの自動車メーカーや部品メーカーも自社の試験体制を強化する構えを見せる。一方で、橋爪氏は「専門技術を持った試験人材が不足している。自動車メーカーが求める試験は高度なものであり、対応する設備のコストも高い」と指摘し、試験の外部委託ニーズが高まっていると説明する。外部委託によって「トータルで見ると試験コストを削減できる」(橋爪氏)ためだ。
この流れを受け、同社は自動車領域における安全性認証や試験サービス事業を拡大する方針を示している。2017年にオートモティブテクノロジーセンター(ATC)を愛知県みよし市に開所し、2018年には「日本に1基しかない」(橋爪氏)EHV ChamberをATC内に設置した。EHV ChamberはEV(電気自動車)やハイブリッド車部品向け固定型ダイナモメーター付き電波暗室のことで、モーターやインバーターなどに対して、最高トルク125Nm、最高回転数1万2000rpm、動力吸収容量170kWまでの実負荷を再現しつつ、EMC(電磁環境両立性)特性を測定できる。
このEHV Chamberは電波暗室にダイナモメーターのシャフトを通す穴を設けるため、電波無響特性を確保した暗室設計には高い知見が求められ、同施設には多くの顧客から引き合いを受けているという。同社は試験能力のさらなる拡充を目的として、2020年に同社鹿島EMC試験所(千葉県香取市)でEHV Chamberを2基新設する計画も明らかにしている。
このほど新設された信頼性試験ラボでは、電装品をメインとした全ての車載機器を対象として環境試験と耐久試験の外部委託サービスを提供する。UL Japanはラボの新設にあたり、約3億円を投じて18台の試験設備を導入。グローバル市場でビジネスを展開する自動車メーカー、部品メーカーの独自規格試験にも対応するとし、橋爪氏は「欧州の会社では125℃まで試験しないといけないところもある。グローバルでサポートできるようさまざまな仕向け地やメーカーに対応できる試験装置を取りそろえた」と強調する。また、メーカーはEMCと信頼性試験をワンストップで委託できるため、「サンプル数を削減でき、試作品を作る手間を減らせることも大きいメリット」(橋爪氏)とした。
橋爪氏は信頼性試験ラボを含めた同社自動車領域事業の強みについて、「UL認証で培った信頼とサービス」があると語る。「信頼のおけるサービスは顧客にとって重要だ。われわれは認証機関として規格に基づいたサービスを提供している。また、専門知識を持った技術者も40人ほど在籍している。このキャパシティの高さも信頼につながるだろう」と自信を見せた。
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