「速く走る」といっても走法には違いがある、アシックスが2つの新シューズを開発:デザインの力(2/2 ページ)
アシックスは「ASICS INNOVATION SUMMIT 2021」を開催し、同社が目指す未来とパーソナライゼーションの考え方について、その方向性を示すとともに、トップランナー向けランニングシューズの新製品「METASPEEDシリーズ」を発表した。
ランニングスタイルによる違いを製品設計に反映
また、METASPEEDシリーズの開発では、ストライド型の方が上下運動が大きい、ピッチ型の方が腰の位置が低い、ストライド型は腰の下で足が着地するがピッチ型は腰の前で着地するといったランニングスタイルによる違いをとことん分析し、それらを製品設計に反映した。
具体的に、ストライド型走法向けのMETASPEED Skyと、ピッチ型走法向けのMETASPEED Edgeには、共通するテクノロジーに3つの違いがあるという。
1つ目は、ミッドソールの厚さだ。METASPEED Sky(メンズ)のミッドソールの高さがかかと33mm/つま先28mmであるのに対して、METASPEED Edge(同)はかかと29mm/つま先21mmと、METASPEED Skyの方が厚底になっている。2つ目は、かかとからつま先までの高さ(ドロップ)だ。こちらはMETASPEED Skyが5mm、METASPEED Edgeが8mmとなっており、METASPEED Edgeの方が高く設定されている。3つ目は、前足部のカーブ角度の違いで、METASPEED Skyはシャープに、METASPEED Edgeはマイルドな曲線となっている。
「METASPEED Skyは、METASPEED Edgeよりも前足部のソールに厚みを持たせることでストライドを伸びやすくしている。一方、METASPEED Edgeはピッチの回転数を妨げないようにドロップや前足部のカーブ角度を調整し、前へ進みやすい構造とした」と、同社 パフォーマンスランニングフットウエア統括部 開発部 パフォーマンスランニング開発チームの竹村周平氏は両製品の違いについて説明する。
マテリアルに関しては、両製品で共通の素材を使用する。ミッドソールのフォーム材には、同社の軽量ミッドソールフォーム材の中で最も反発性に優れた「FF BLAST TURBO」を開発し、採用した。シューズ側面部には安定性を向上させ、体を前に進める効果のある「FULL-LENGTH CARBON PLATE」を、アウトソールには強力なグリップ性能を発揮する「ASICSGRIP OUTSOLE」を搭載。そして、アッパーには通気性を高め、快適さを保持する100%リサイクルポリエステルを使用した「ENGINEERED MESH UPPER」を使用している。
プロランナーの川内選手が高評価
METASPEEDシリーズの開発では、速く走ることを目指して、1歩のストライドの長さを従来製品や競合製品よりも伸ばすことを目標にしてきた。アシックススポーツ工学研究所が行った予備実験では、ストライド型、ピッチ型のいずれにおいてもMETASPEEDシリーズを使用した場合に従来品よりもストライドの伸びを確認できたという。
また、1歩のストライドの長さが伸びるということは、より少ない歩数で走れるということだ。実験では、METASPEED Skyを履いたストライド型のランナーで1.2%(平均350歩)、METASPEED Edgeを履いたピッチ型のランナーで2.6%(平均750歩)ほど少ない歩数でマラソンを走り切れるという推定結果を得ることに成功した。
実際、METASPEED Skyのプロトタイプを履いて「第76回 びわ湖毎日マラソン」(2021年2月28日開催)に出場し、8年ぶりの自己新記録となる2時間7分27秒でゴールした日本人プロランナーの川内優輝氏は「復活どころか、進化することができた。アスリートにとって過去の自分を超えることは1つのテーマであり、長年忘れていた自己ベストを更新するという喜びをMETASPEEDによって取り戻すことができた」と、METASPEEDシリーズの性能を高く評価する。
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