靴内センサーを小型化せよ、ベンチャーが挑む未経験のスマートシューズ作り:モノづくりスタートアップ開発物語(4)(1/3 ページ)
オープン6年目を迎えた東京・秋葉原の会員制モノづくり施設「DMM.make AKIBA」で社会課題を解決しようと奔走しているスタートアップを追いかける連載「モノづくりスタートアップ開発物語」。第4回はスマートシューズを開発しているno new folk studioのCEO 菊川裕也氏に、開発経緯などを聞いた。
オープン6年目を迎えた東京・秋葉原の会員制モノづくり施設「DMM.make AKIBA」で社会課題を解決しようと奔走しているスタートアップを追いかける連載「モノづくりスタートアップ開発物語」。第4回はスマートシューズを開発しているno new folk studio(ノーニューフォークスタジオ、以下、nnf)のCEO 菊川裕也氏に、開発経緯などを聞いた。
靴内のセンサーがランニングフォームを可視化する
笹川スポーツ財団の調べでは、約960万人といわれる国内のランナー人口。彼らに共通する大きな悩みごとの1つが、「自分のランニングフォームは正しいのか」というものだ。自分に合った理想的なフォームで走れば、けがを防いだ上で、タイム向上も目指せるようになる。だからこそ、ランナーにとっては大きな関心事であり「永遠のテーマ」となっているのだ。
陸上競技選手など、一部の一流ランナーはモーションキャプチャー技術などを使い、各関節の動きを3次元データ化することで自身のフォーム分析を行っているという。この他にも、経験豊かなコーチに日々の練習をチェックしてもらいながら、フォームを矯正するなど、自身の走りを理想的なフォームに近づけやすい環境が整っている場合が多い。しかし、プロではないアマチュアの一般ランナーは、自分で本を読んだり、先輩ランナーに教わったりするしかなかった。
……というのが、これまでのランナーの常識だった。これを変えようとするのが、「ランナーの専属コーチになり得るシューズ」を開発するnnfだ。
nnfがスポーツ用品大手のアシックスと共同開発したスマートシューズ「EVORIDE ORPHE(エボライド・オルフェ)」は、ソール部分にセンサーが埋め込まれている。これは加速度センサーとジャイロセンサーを組み合わせたもので、足の回転数(ピッチ)や歩幅(ストライド)、足の着地の角度(プロネーション)、足のどの部分で着地しているかといった情報をデータとして取得し、スマートフォンアプリに蓄積していく。
さらに、ランナーに対しては一定時間ごとに音声で「体の真下近くに足を着くようにして、素早い体重の乗り込みを意識しましょう」などと、より理想的な走りを実現するためのアドバイスをしてくれる。ランニング後にアプリを開くと、データに基づいて可視化された自分のランニングフォームを確認でき、走り方について細かなアドバイスも書かれている。シューズが「自分専属のコーチ」としての役目を果たしてくれるというわけだ。
ランナーからの注目度も高い。2020年7月にクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で先行予約を受け付けたところ、予約開始当日に目標額の300万円を突破し、9月29日時点で3200万円を超えたという。
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