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「速く走る」といっても走法には違いがある、アシックスが2つの新シューズを開発デザインの力(1/2 ページ)

アシックスは「ASICS INNOVATION SUMMIT 2021」を開催し、同社が目指す未来とパーソナライゼーションの考え方について、その方向性を示すとともに、トップランナー向けランニングシューズの新製品「METASPEEDシリーズ」を発表した。

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 アシックスは2021年3月30日、「ASICS INNOVATION SUMMIT 2021」を開催し、同社が目指す未来とパーソナライゼーションの考え方について、その方向性を示すとともに、トップランナー向けランニングシューズの新製品「METASPEEDシリーズ」を発表した。

トップランナー向けランニングシューズの新製品「METASPEEDシリーズ」
トップランナー向けランニングシューズの新製品「METASPEEDシリーズ」 ※出典:アシックス [クリックで拡大]

アシックスが目指す未来

 同社は「健全な身体に健全な精神があれかし」という創業哲学の下、ブランドスローガン「Sound Mind,Sound Body」を掲げ、スポーツを通じて世界を元気にするグローバルブランドキャンペーンを展開している。

 2020年10月には“2030年にありたい姿”を描いた長期ビジョン「VISION2030」を発表。現在の事業の根幹を担う「プロダクト」をさらに強化するとともに、スポーツを安全・安心に楽しめる環境づくりや仲間とのつながりを創出する「ファシリティー&コミュニティー」、分析と診断/パーソナルデータを用いたコーチングサービスを提供する「アナリシス&ダイアグノシス」といった新たな領域に事業を拡大する方針を打ち出した。そして、これらを実現する共通テーマとして、「デジタル」「サステナビリティ」「パーソナライゼーション」の3つを挙げ、新製品やサービスの開発、企業活動に取り組んでいる。

 「デジタル」では、スマートシューズ「EVORIDE ORPHE」の発売を皮切りに、パーソナルコーチングサービスの「Runmetrix」、さらにはパーソナライズされたランニング体験を提供する「ASICS Premium Running Program」の提供を開始するなど、続々と新たな製品/サービスを提供している。

 「サステナビリティ」では、循環型社会の実現に向けて再生ポリエステルを使用した製品開発に取り組み、スポーツができる健やかな地球環境を守り、将来世代に継承していくことにコミットしている。

アシックス 代表取締役社長COOの廣田康人氏
アシックス 代表取締役社長COOの廣田康人氏 ※画像提供:アシックス [クリックで拡大]

 「パーソナライゼーション」では、アスリート一人一人のポテンシャルを引き出し、パフォーマンスを最大限発揮させるという考え方に基づき、新製品を開発していく。今回、ASICS INNOVATION SUMMIT 2021の場で初披露されたMETASPEEDシリーズについて、同社 代表取締役社長COOの廣田康人氏は「METASPEEDシリーズは、世界のトップランナーの走行データを解析し、渾身(こんしん)の力を注いで作り上げたシューズであり、私自身も大いに期待している。これからも数々のイノベーションにより、アスリートのパフォーマンスを最大化するとともに、運動やスポーツを通じて、世界の人々の心身の健康に貢献していきたい」と述べる。

速く走るための“シンプルな掛け算”をとことん追求

 METASPEEDシリーズは、ストライド型走法のアスリート向けに設計されたランニングシューズ「METASPEED Sky」と、ピッチ型走法のアスリート向けに設計されたランニングシューズ「METASPEED Edge」の2種類を展開する。いずれも販売価格(税込み)は2万7500円。

 同社は、単なるカスタマイズや表面的な美しさを変えるだけではなく、人間の身体や動作を科学的に分析し、それらを製品開発に生かす「ヒューマンセントリックサイエンス(人間中心の科学)」の考えに基づき、アスリート一人一人にベストなプロダクトを提供することこそが、パーソナライゼーションであると考えている。そのため、METASPEEDシリーズの開発では、アスリートとの対話を特に重視しながら、多くの議論を交わし、研究開発にも参加してもらいながら、製品化を進めてきたという。

アシックススポーツ工学研究所 フューチャークリエーション部の谷口憲彦氏
アシックススポーツ工学研究所 フューチャークリエーション部の谷口憲彦氏 ※画像提供:アシックス [クリックで拡大]

 「アスリートの願いは『速く走ること』だ。スピードは“ストライド×ケイデンス(ピッチ)”という非常にシンプルな掛け算で表すことができる。METASPEEDシリーズの開発ではそれをとことん追求した。多くのトップアスリートのストライドとピッチのデータを収集して分析したところ、速く走ろうとする際、走り方に“違い”があることが分かった」とアシックススポーツ工学研究所 フューチャークリエーション部の谷口憲彦氏は説明する。

 その違いとは、走速度が速くなればなるほどストライドが大きく変化する走り方(ストライド型)と、走速度が速くなるとストライドとピッチの両方が次第に上昇していく走り方(ピッチ型)である。多くのトップアスリートのストライドとピッチのデータを分析することで、速く走ろうとしたときに、ストライド型とピッチ型の2つのランニングスタイルが存在することを見だしたのだ。

ストライド型とケイデンス(ピッチ)型の傾向を示した予備実験の結果
ストライド型とケイデンス(ピッチ)型の傾向を示した予備実験の結果 ※出典:アシックス [クリックで拡大]

 さらに、同社はアスリートがシューズに合わせるのではなく、シューズがアスリートのランニングスタイルに寄り添い、最大限のパフォーマンスを発揮させることが、目指すべきソリューションだと考え、ストライド型走法向けのMETASPEED Skyと、ピッチ型走法向けのMETASPEED Edgeの2種類のシューズを開発するに至った。「従来は、ストライド型の人もピッチ型の人も、1種類の同じシューズしか選択肢としてなかったが、アシックスはMETASPEEDシリーズによってその常識を変えた」(谷口氏)。

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