力を検知して色が変化する素材「無機ナノシート構造色ゲル」を開発:組み込み開発ニュース
福岡工業大学は、力を検知して色が変化する素材「無機ナノシート構造色ゲル」を開発した。厚み約1nmの無機ナノシートの集合体を用いたもので、1kPaの微弱な力を検知して色を変えられる。
福岡工業大学は2021年3月4日、力を検知して色が変化する素材「無機ナノシート構造色ゲル」を開発したと発表した。厚み約1nmの無機ナノシートの集合体を用いたもので、1kPaの微弱な力を検知して色を変えられる。チョウの鱗粉やクジャクの羽など、無色の物質がさまざまな角度で光を反射して発色する構造色を模倣した。
無機ナノシートは、天然鉱物などの無機物質からつくられる。無機物質の中には、薄いシートが重なった層状結晶の状態のものがあり、これを剥離、分離させてナノレベルのシートにする。
無機ナノシート構造色ゲルは、この無機ナノシートの集合体で作られる。高分子ゲルの中に固定化された無機ナノシートが、ナノシートの厚みの数百倍の間隔で規則正しく並んだ構造となっている。高分子ゲルとナノレベルで複合化されているため、圧縮破壊強度が3MPaと高く、柔軟性にも優れ、荷重による破壊前兆を警告する表示デバイスを作製できる。
豆腐をつぶす力の10分の1程度の弱い力を検知し、色変化を起こすまでに要する時間は1ミリ秒以下。何度でも繰り返して色変化を起こすことが可能で、センサーを用いずに物体表面にかかる力をリアルタイムで可視化できる。
同素材は、表面加重の可視化が重要となるスポーツ科学分野や、水力発電用水車などのエネルギー機器開発分野での用途が見込まれる。さまざまな機能性や高い設計性を有する層状ペロブスカイトからできているため、今後は特定の化学物質の検出などでの応用も期待される。
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