新封止材料で有機半導体を長寿命化、物流向けの温度/振動記録用薄型電子タグ:組み込み開発ニュース
東京大学大学院新領域創成科学研究科は2021年2月25日、長期安定性を実現した有機半導体温度/振動センサー素子を用いた物流向け薄型電子タグを開発したと発表。新封止材料などを採用することで、従来の課題であった有機半導体の耐久性向上を実現した。
東京大学大学院新領域創成科学研究科は2021年2月25日、同研究科 マテリアルイノベーション研究センターやパイクリスタル、日立物流、三井不動産などと共同で、長期安定性を実現した有機半導体温度/振動センサー素子を用いた物流向け薄型電子タグを開発したと発表。輸送中の商品の温度や、外部から加わった衝撃などを、長期にわたり継続的かつ安定的に記録できる。
2021年3〜4月にかけて、「柏の葉スマートシティ」(千葉県柏市)と遠隔地の漁港間での鮮魚物流に薄型電子タグを適用した実証実験を実施する予定だ。
有機半導体の素子は耐久性に課題
医薬品や食品の物流シーンにおいて、輸送商品の品質を維持するために、温度変化や商品への衝撃を検知、継続的に記録するデバイスの導入ニーズが高まっている。しかし、既存のデバイスはパッケージング時にかさばりやすく使い勝手がいまひとつであるなど、デバイス自体が高コストであることから十分に普及しているとは言い難い状況である。
解決策として有力視されるのが、有機半導体の温度/振動センサー素子を搭載したフィルムデバイスだ。ソフトな薄型形状のためかさばらず、生鮮品を傷つけにくいというメリットがある。有機半導体素子を用いることで、デバイスの低消費電力化と低コスト化も同時に実現できる。ただ、有機半導体を用いた素子は耐久性に課題があり、長期の安定使用には適さなかった。
東京大学発スタートアップの技術を採用
今回新開発した電子タグでは、有機半導体の封止材料に柔軟で低コストの有機/無機ハイブリッド材料を用いることで、デバイスの長期安定動作を実現した。加えて電子タグの生産過程に、東京大学発の有機半導体開発スタートアップであるパイクリスタルが開発した、低消費電力のデータ処理回路と無線通信回路をスクリーン印刷で基板上に実装する技術を導入して、低コスト化と1年程度のバッテリー寿命を実現した。
既にセンサーデバイスの試作品を用いて、柏の葉スマートシティでの鮮魚物流や、東京と大阪間での低温物流に適用する実証実験を実施済み。2021年3月から開始予定の実証実験では、長距離の鮮魚物流に電子タグを適用して、保冷箱内の温度データの継続的な取得や、取得したデータをクラウドサーバにアップロードする手法などを検証する予定。
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