在庫過剰を解消し、サプライチェーンの強靭化を促すAIソリューション:サプライチェーン改革
NTTデータ グローバルソリューションズは2021年2月17日、AIを活用した在庫管理ソリューションを展開する米国スタートアップVerusenとの協業開始を発表した。クラウドベースのAI在庫データ管理ソリューションを通じて、企業が過剰に在庫を抱える状況を防ぎ、コストを低減する。
NTTデータ グローバルソリューションズ(以下、NTTデータGSL)は2021年2月17日、AI(人工知能)を活用したサプライチェーンの最適化ソリューションを展開する米国企業のVerusen(ベルーセン)と協業を開始すると発表した。クラウドベースのAI在庫データ管理ソリューションを通じて、企業が過剰に在庫を抱える状況を防ぎ、コストを低減する。
在庫の「データ品質」と「オペレーションの問題」をAIで解決
Verusenは2015年に創業した米国スタートアップである。主にAI技術を活用した、在庫管理を中心とするサプライチェーンのDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するクラウドベースのソリューションを開発している。Verusenのソリューションを活用することで、複数拠点間での商品在庫データを共有、管理しやすくして在庫の過剰状態を解消。それに伴いコスト削減も実現する。
NTTデータGSL 世界戦略室 室長の島田祥元氏は「従来、複数倉庫にまたがる在庫データ管理は『データの品質水準』と『オペレーション』の2点で課題を抱えていた」と指摘する。
データの品質水準に関する問題として起こりがちなのが、拠点間の連携不備によって、同じ品物に対して拠点ごとに異なる品番が付けられているケースだ。在庫品の数を適切に把握できなくする原因となる。また、オペレーションの面では、データ管理業務が部門ごとにサイロ化しやすく、実務連携が適切にとれない場合があった。加えて、データのクレンジング(修正)作業を人手で行う場合は、メンテナンスに大きな手間がかかる。島田氏は、これらの問題をVerusenのソリューションを活用することで解決できると説明する。
PoCは90日間で実施可能
活用の具体的な流れとしては、まず、過去3年分の品目リストと購買・商品移動データなど、Verusenが指定するデータ群を既存の在庫管理システムから抽出して、Verusenのクラウドプラットフォームに移行、分析させる。その結果、倉庫別に削減可能なコストが提示されるとともに、推奨される在庫量の目安や、その目安の根拠となった過去の注文履歴に関するデータなども表示される。また、品番が異なるが実際には同一物だと推測される品目をAIが自動的に判断して知らせる。人間のオペレーターは品目が本当に同一物かを確認した上で在庫管理データに反映できる。
島田氏は「これらの一連の作業について、3カ月と比較的短期間でPoC(概念実証)を実施できる点も特徴だ」と説明する。スピーディーな立ち上げが実現できる上、クラウドベースのサービスのためIT投資のリスクを軽減できるというメリットも期待できる。
協業の背景について、島田氏は「コロナ禍において、多くの企業がサプライチェーンの混乱による影響を大きく受けた。中長期的な視点でサプライチェーンの復元力(レジリエンス)を鍛えるとともに、非常時に備えたキャッシュフローの維持が課題になる。この2つの価値を同時に提供できるソリューションとしてVerusenに注目した」と語る。
今後のロードマップについては、2021年5月ごろにサービスの本格展開を開始するとした。
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