シーメンスがエッジコンピューティングの本格展開を日本で開始:エッジコンピューティング(2/2 ページ)
シーメンスは2021年2月17日、製造現場でコンピューティングパワーをさまざまな用途で活用できるエッジコンピューティングソシューション「Industrial Edge」を日本で本格展開すると発表した。
低価格で中小製造業でもエッジコンピューティングを活用可能に
実際に使用する際は、エッジデバイスを購入し、エッジアプリストアからアプリを取得し活用する形での活用となる。価格は、初期登録として「インダストリアルエッジハブ」へのアクセスが300円、インダストリアルエッジデバイスのライセンスが1台当たり年間3万6000円となっている。その他、機種の購入代金は別料金で、アプリの導入料金も年間契約で別料金(無料のものもある)が必要だという。
雨宮氏は「現場データを上位システムに収納するだけのシステムであれば、初期費用300円と年間契約費用3万6000円と機器費用だけで利用できる。従来はエッジコンピューティングのようなことを実現しようとすると、カスタムで一から開発しなければならず、数百万円かかるケースも多かったが、この価格感であれば、中小製造業でも活用できるようになる。エッジコンピューティングの活用をより広い環境に広げていく」と語っている。
既に数十のアプリを用意
現在既に開発済みで提供されているアプリには、シーメンスが展開するクラウドベースの“IoTオペレーションシステム”「Mindsphere(マインドスフィア)」やマイクロソフトの「Azure」、アマゾンウェブサービスの「AWS」などのクラウドとの連携機能や、OPC UAやEthernet I/P、Modbus TCP、PROFINETなど通信プロコルとの接続機能などが用意されている。その他では、データ処理機能開発を容易化する「Flow Creator」やパフォーマンス管理を容易化する「Live Twin」などさまざまなものが用意されている。
シーメンスでは、製造現場の制御情報などを取りまとめる統合エンジニアリング基盤としてTIA(Totally Integrated Automation)コンセプトを打ち出しているが、「インダストリアルエッジ」はこの一端を担うものとなる。また、同社では「MindSphere」を展開し、クラウド上で使うアプリについては独自のアプリストアなども展開しているが、「インダストリアルエッジ」との位置付けの違いについては「現在は、それぞれでアプリストアを展開する状態となっている。クラウドを活用する場合はマインドスフィア側でアプリを購入し、エッジで活用する場合はインテリジェントエッジ側でアプリを購入する必要がある。顧客ニーズにより、エッジ側、クラウド側それぞれでデータ処理を行いたいニーズもあるため、現在は分けている」と雨宮氏は語っている。
関連記事
- エッジ強化を再度打ち出したシーメンス、マインドスフィアは段階別提案へ
ドイツのSiemens(シーメンス)は、ハノーバーメッセ2019(2019年4月1〜5日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、新たに「インダストリアルエッジデバイス」などエッジ領域の再強化に乗り出す方向性を打ち出した。また産業用IoTのOSを目指すIoT基盤「MindSphere(マインドスフィア)」は段階別提案を強化する方針を訴えた。 - SAPと新たに提携、“真のデジタルスレッド”に向け拡張目指すシーメンスの戦略
ドイツのSiemens(シーメンス)は2020年7月16日、グローバルでのデジタルイベント「Digital Enterprise Virtual Summit」を開催。その中でシーメンスでデジタルインダストリー部門COO(Chief Operating Officer)を務めるヤン・ムロジク(Dr. Jan Mrosik)氏が「産業の未来を共に創る」をテーマに講演を行い、同社のデジタルエンタープライズ戦略や、SAPとの提携について説明した。 - 未来の工場像を“描く”ことを訴えたシーメンス、マインドスフィアはVWが採用へ
ドイツのSiemens(シーメンス)は2019年4月1日(現地時間)、ハノーバーメッセ2019でプレスカンファレンスを実施し、新しい技術群によりインダストリー4.0などで描かれるコンセプトがさらに拡張していけることを訴えた。 - いまさら聞けない「エッジコンピューティング」
IoT活用やCPS進展の中で、あらためて脚光を浴びている「エッジコンピューティング」。このエッジコンピューティングはどういうことで、製造業にとってどういう意味があるのかを5分で分かるように簡単に分かりやすく説明します。 - ノンプログラミング開発環境がIoTのエッジとクラウドの相克を解消する
IoT活用を進めていく上で大きな課題になるのが、IoTデバイスなどのエッジ側とクラウド側の間に存在するソフトウェア開発環境の違いだ。この相克を解消するノンプログラミング開発環境に注目が集まっている。 - スマートファクトリーはエッジリッチが鮮明化、カギは「意味あるデータ」
2017年はスマートファクトリー化への取り組みが大きく加速し、実導入レベルでの動きが大きく広がった1年となった。現実的な運用と成果を考えた際にあらためて注目されたのが「エッジリッチ」「エッジヘビー」の重要性である。2018年はAIを含めたエッジ領域の強化がさらに進む見込みだ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.