シーメンスがエッジコンピューティングの本格展開を日本で開始:エッジコンピューティング(1/2 ページ)
シーメンスは2021年2月17日、製造現場でコンピューティングパワーをさまざまな用途で活用できるエッジコンピューティングソシューション「Industrial Edge」を日本で本格展開すると発表した。
シーメンスは2021年2月17日、製造現場でコンピューティングパワーをさまざまな用途で活用できるエッジコンピューティングソシューション「Industrial Edge(インダストリアルエッジ)」を日本で本格展開すると発表した。
現場にコンピューティングパワーを
製造現場でもIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)など先進のデジタル技術を活用したスマートファクトリー化への取り組みが進んでいる。さまざまなデジタル技術の活用で大きな注目を集めているのがクラウドコンピューティングだが、製造現場での使用を考えた場合、リアルタイム性やセキュリティ、コストなどの面で課題を抱える。そこで、製造業では、製造現場に適したコンピューティングが行える技術として「エッジコンピューティング」に大きな関心を寄せている。
「エッジコンピューティング」とは、その名の通り「エッジ(データ収集、活用の端の部分、現場)」で使うコンピューティングデバイスもしくはコンピューティングパワーを使った処理を意味する。データの発生源である現場に情報処理端末を設置し、“自律分散型”で情報処理を行う仕組みである。
こうした背景を受け、シーメンスでは2019年4月の「ハノーバーメッセ」でエッジコンピューティングソリューションの「インダストリアルエッジ」を発表。独自のエッジ専用端末などを示し、エッジ領域の情報処理を強化する姿勢を示していた。
この発表後は、限定顧客約100社に先行導入し、使い方や機能などの検討を進め、今回日本でも本格展開を開始することになった。シーメンス(日本法人)ファクトリーオートメーション ビジネスデベロプメント グループマネージャーの雨宮祐介氏は「2年前の発表時は実現できない機能もあった。先行プロジェクトには日本企業も数社参加しており、その中でニーズや使い方などの検討を進めることができた。これらにより、日本の製造現場でも役立つ機能などがそろってきたので本格展開できるようになった」と語っている。
「インダストリアルエッジ」を構成する3つの要素
シーメンスが提供する「インダストリアルエッジ」は主に3つの機能で構成されている。
まずは、エッジコンピューティングのさまざまな機能を実行するハードウェア面での土台となる「エッジデバイス」である。これは、エッジアプリ実行インフラやアプリの更新機能、セキュリティや通信機能などを備えているものだ。現状では、シーメンス製の産業用PCが対象となっているが「今後はシーメンスが展開するPLCやHMIでもエッジコンピューティング処理が行えるようにする計画だ」(雨宮氏)としている。ただ、シーメンス以外の機器での対応については「現状では、計画はない」(雨宮氏)という。
次に「エッジマネジメント」がある。これはエッジアプリストア、エッジアプリマネジメント、エッジデバイスマネジメントなどの機能で構成されており、エッジコンピューティングで必要とされる機能を実現する環境を用意するものだ。
そして、実際にさまざまな役割を果たすための「エッジアプリ」がある。例えば、データの前処理やデータ通信、プロトコル連携などの役割などが想定されている。アプリはシーメンスが開発したものの他、パートナーやユーザーが独自で開発することも可能だという。アプリの提供は、コンテナ技術であるDockerを採用しており、デバイス環境などに影響を受けずに機能を提供できる。
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