皮膚内のメラニン色素そのものを蛍光観察する技術を開発:医療技術ニュース
東北大学とコーセーは、シミの原因となるメラニン色素を蛍光標識する試薬を開発し、ヒトの皮膚組織内でメラニン色素そのものを三次元的に可視化することに成功した。
東北大学は2020年12月24日、シミの原因となるメラニン色素を蛍光標識する試薬を開発し、ヒトの皮膚組織内でメラニン色素を三次元的に可視化することに成功したと発表した。コーセーとの共同研究による成果だ。
試薬の開発に当たり、東北大学が開発したメラニン色素を直接標識できる蛍光可視化試薬「M-INK」を活用。これにヘマグルチニン(HA:Hemagglutinin)タグを付加して、メラニン色素を蛍光標識する試薬「HA-M-INK」を開発した。
HA-M-INKを用いた実験では、ヒトの皮膚において、メラニン色素が存在するメラノサイト(色素細胞)とケラチノサイト(表皮細胞)の両方で、メラニン色素を蛍光観察できた。
次に、コーセー研究所のフランス分室で、明るさの異なる皮膚を入手し、HA-M-INKを用いて解析した。その結果、皮膚の明暗に応じて、メラニン色素の量と分布が大きく異なることが分かった。
また、三次元画像構築が可能な共焦点レーザー顕微鏡を用いて、HA-M-INK蛍光標識メラニン色素を観察したところ、広範囲かつ三次元的に皮膚内部のメラニン色素を解析できた。
シミの原因となるメラニン色素が肌内部でどのように分布しているかについての知見は、シミに対する美白アプローチを開発する上で重要だ。これまで皮膚組織内のメラニン色素を直接可視化することは難しかった。今回開発した技術を活用することで、過剰に蓄積されたメラニン色素に有効な成分の開発などが期待される。
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