協働ロボットがトルクセンサレスで「柔らかさ」を実現、樹脂で軽量化も:ロボデックス
豆蔵は、「第5回 ロボデックス」において、三井化学、日本電産シンポと共同開発した、「軽さ」と「柔らかさ」を設計コンセプトとする協働ロボット「Beanus2」の試作機を披露した。
豆蔵は、「第5回 ロボデックス」(2021年1月20〜22日、東京ビッグサイト)において、「軽さ」と「柔らかさ」を設計コンセプトとする協働ロボット「Beanus2」の試作機を披露した。三井化学、日本電産シンポと2020年4月から共同で研究してきた成果であり、三井化学の樹脂成形技術を用いた軽量化と、日本電産シンポの高いバックドライバビリティ(逆駆動性)を持つ減速機と豆蔵の力制御アルゴリズムの融合によりトルクセンサーを使わずに外力を検出する技術などを採用している。今後はBeanus2の成果をロボットメーカーに提案するとともに、現在は金属製の減速機を樹脂化するなどの取り組みも進めたい考え。
Beanus2は、豆蔵が2016年から展開を始めた産業用ロボット開発支援サービスの技術力を基にして独自開発した7軸協働ロボット「Beanusシステム」の第2弾となる。可搬質量は10.0kgで、最大動作領域は854mm、ロボットアームの質量は27.5kg。
Beanus2では、協働ロボットに求められる安全性と、重いものを運んだり素早く動作したりという機能性の両立を目指して「軽さ」と「柔らかさ」を設計コンセプトとした。「軽さ」を実現したのが、三井化学の樹脂成形技術によるロッボトアームフレームの樹脂化である。フレーム単体の重量については、従来の金属製と比べて半減できている。金属との接合が必要な箇所は、金属樹脂一体成形技術を使用して樹脂でありながらも高い剛性を実現した。「軽量化によって、衝突時の衝撃力が小さくなるし、より出力の小さいモーターで可搬重量を高められる」(豆蔵の説明員)という。
協働ロボットで「柔らかさ」を実現するには、ロボットアームの各関節にトルクセンサーを組み込むことにより外力を検出する場合が多いが、その分だけ高価になってしまう。Beanus2は、トルクセンサーを使わずにサーボモーターの電流値を用いて外力を高精度に検出するセンサレスの仕組みを採用しておりコスト増を抑えている。このセンサレスの仕組みは、高減速比、高効率、低摩擦で外力をリニアにサーボモーターに伝達できる日本電産シンポの高バックドライバビリティ減速機と、サーボモーターの電流値から高精度に外力を検出する豆蔵の力制御アルゴリズムから構成されている。
日本電産シンポの高バックドライバビリティ減速機のデモ展示。左側に高バックドライバビリティ減速機が、右側は一般的な遊星減速機を組み込んでおり、高バックドライバビリティ減速機は外力を加えたときに軽く動く。このため、外力によって発生するサーボモーターの電流値もリニアに変化する。高バックドライバビリティ減速機の仕様はモーター容量100W、減速比は80分の1、定格トルクは22.7Nm(クリックで拡大)
センサレスで「柔らかさ」を実現する力制御アルゴリズム。高バックドライバビリティ減速機によって可能になった高精度なトルク推定から、アーム先端外力を算出し、手先と関節を柔らかく制御するインピーダンス制御を行える(クリックで拡大) 出典:豆蔵
Beanus2全体の設計はBeanusシステムを開発した知見とノウハウを持つ豆蔵が担当した。「Beanus2では『軽さ』と『柔らかさ』を重視しており、一般的な産業用ロボットと比べると繰り返し位置決め精度は±0.1mmであまり高精度とはいえない。しかし、市場が拡大する協働ロボットの用途は必ずしも高精度を要求しないことも多い。今回のような設計手法をロボットメーカーに提案することで、協働ロボット開発の新しい視点を提供していきたい」(同説明員)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 協働ロボットはコロナ禍の人作業を補う手段となり得るか
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による混乱は2021年も続きそうな兆しを見せている。製造現場でも人の密集や密閉空間による作業が制限される中、これらを回避するために人作業の一部を代替する用途で期待を集めているのが協働ロボットの活用だ。2021年はコロナ禍による働き方改革も含め、製造現場での協働ロボット活用がさらに加速する見込みだ。 - 協働ロボット普及のカギは「用途別パッケージ」、2020年は“第3の道”にも期待
人口減少が加速する中、製造現場でも人手不足が深刻化している。その中で期待を集めているのがロボットの活用だ。特に協働ロボットの普及により人と同一空間を活用し新たな用途開拓が進んでいる。2020年はこれらの技術進化による普及が本格的に進む一方で、「人」との親和性をさらに高めた“第3の道”の登場に期待が集まっている。 - 人手不足対策で完全自動化は逆効果、人とロボットの協力をどのように切り開くか
人手不足に苦しむ中で、工場でもあらためて自動化領域の拡大への挑戦が進んでいる。その中で導入が拡大しているのがロボットである。AIなどの先進技術と組み合わせ、ロボットを活用した“自律的な全自動化”への取り組みも進むが現実的には難易度が高く、“人とロボットの協調”をどう最適に実現するかへ主流はシフトする。 - 協働ロボットを自社開発した豆蔵、売り物は産業用ロボットの開発支援サービス
豆蔵は、「第7回 IoT/M2M展 春」(2018年5月9〜11日、東京ビッグサイト)において、自社開発した協働ロボット「Beanusシステム」を展示した。 - ヤマハ発動機が協働ロボットの試作機を公開、高精度力センサーを全軸に組み込み
ヤマハ発動機は、開発中の協働ロボットの試作機を公開した。同社は早稲田大学発のロボット開発スタートアップである東京ロボティクスと協業しており、2021年内の一部ユーザーへの導入、2022年内の本格発売に向けて、両社の技術を融合した協働ロボットの開発を進めている。 - 協働ロボットの安全評価をどう考えるか、「安全」で売るロボットSIの取り組み
労働人口減少やCOVID-19の影響から製造現場の人作業の置き換えで注目を集めているのが協働ロボットである。しかし、協働ロボットの導入にはさまざまな課題があり普及拡大は容易ではない状況だ。協働ロボットの動向と課題点について、協働ロボット専門のシステムインテグレーションを展開しているIDECファクトリーソリューションズ 取締役でロボットシステム部部長の鈴木正敏氏に話を聞いた。