新たな可能性を提示するオートデスク、カギを握るクラウドデータ基盤「Forge」:Autodesk University 2020(2/2 ページ)
Autodeskは、グローバルカンファレンス「Autodesk University 2020」をオンラインで開催した。“REIMAGINE POSSIBLE”をテーマに据えた同イベントの基調講演には、同社 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト氏が登壇し、これからの業務の在り方や新たな変革を支援する同社の戦略などについて語った。
他ツールなどとのデータ連携を容易にするForge for Manufacturing
アナグノスト氏の基調講演の中で、製造業をターゲットとした新たな取り組みやソリューションに関するアナウンスがあった。
例えば、クラウドベースの開発者向けプラットフォーム「Forge」の活用がその1つだ。Forgeは、クラウドを介して設計およびエンジニアリングデータにアクセスして使用するのに役立つAPI(Application Programming Interface)とサービスを提供する開発者向けプラットフォームであり、同社のクラウド製品は、Forgeのデータプラットフォームが基盤となっている。
アナグノスト氏の講演では、Forgeを用いて分野をまたぎ緊密な連携を可能にする統合プラットフォームを構築し、Fusion 360による同時並行的なコラボレーション環境を実現することで、離れた場所に分散しているチーム員全員が、同じデザインにアクセスし、デザイン検討が行えるケースを紹介した。
「Forgeのクラウドデータサービスを活用することで、設計者は新しいアイデアを生み出すことができる。また、同時にエンジニアは各設計のパフォーマンスを検証し、ツールの計画やプロトタイプ作成の全てを同じモデルから行うことが可能だ。このクラウドデータサービスを利用すれば、チームがどこにいても、全ての部門が同じ設計課題を、同時に検討できる」(アナグノスト氏)
また、アナグノスト氏はFusion 360を活用した設計課題の探索の幅をさらに拡大したとし、ジェネレーティブデザイン技術を用いた流体シミュレーションに基づく設計の最適化や、製造上の制約条件を加味した洞察アプローチなどに触れ、「Fusion 360の基盤となるクラウドデータサービスは、完全にForge上に構築されているため、データをオープンに活用できる。Forgeはさまざまな同時並行的な処理を可能にするだけではなく、設計製造の拡張性も高めてくれる」(アナグノスト氏)という。
そして、新たにアナウンスされたのが「Forge for Manufacturing」だ。設計プロセスを合理化するもので、Fusion 360のデータだけではなく、他のアプリケーションやプロセスのデータにもオープンにアクセスでき、業務効率化に役立つという。これにより、パートナーが提供するツールとのシームレスな連携(パートナーがFusion 360のデータに簡単にアクセスできる)が可能になる。
「前回、Ansysとの提携を発表したが、Fusion 360上でシミュレーションスタディを設定し、それを『Ansys Mechanical』や『Ansys Discovery』にシームレスにプッシュできるようになる。さらに、Ansysのシミュレーション結果は同じクラウドデータサービスを経由して、Fusion 360にフィードバックされる。この仕組みにより、SSOT(Single Source of Truth:信頼できる唯一の情報源)を実現できる」(アナグノスト氏)
さらに、Forge for Manufacturingを活用することで、例えば「Revit」と「Inventor」の相互運用において、両ツールのより深い統合を実現したり、建築家と建材メーカーとの間で設計ワークフローの自動化を図ったりすることができるという。
「われわれは、設計から製造に至るまでのデータをコネクトし、全く新しい可能性の扉を開く。毎月40万人以上がFusion 360を使用しており、そのうち10万人以上が商用利用している。こうした皆さんにとって、Forge for Manufacturingは信じられないほどの新しい価値をもたらすだろう。また、製造業だけではなく、あらゆる業界のプロセスとの連携、ワークフローの自動化を実現し、データから洞察を得るための支援をすべく、今後もForgeを発展させていく。洞察は可能性を再考し、今日直面している課題を、明日のチャンスに変えることができる」(アナグノスト氏)
その他、製造に関しては、Fusion 360におけるマシンシミュレーションを新たにリリースする。切削加工機などの装置をデジタルで再現し、装置上のツールパスをバーチャルでシミュレーションし、ワークや装置に干渉が発生しないかなどを確認できるというものだ。「このシミュレーションを活用することにより、プロセスの信頼性が向上し、ヒューマンエラーが減少する。デジタルプロセスから物理的なプロセスへ移行する際、感覚的な当て推量や煩雑な作業からユーザーを解放する」とアナグノスト氏は説明する。
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