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失敗するなら早めに――「アナ雪」「ベイマックス」をヒットに導いたディズニー式カイゼン3DCG映画の制作現場から学ぶ(1/4 ページ)

オートデスク主催のユーザーカンファレンス「Autodesk University Japan 2015」において、ディズニー長編アニメ「アナと雪の女王」や「ベイマックス」の制作に携わった米ウォルト・ディズニー・アニメーションズのイアン・クーニー氏が登壇。ディズニーがアニメ制作で重要視する“プレビジュアライゼーション”について語った。

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 世界的に大ヒットしたディズニー長編アニメーション「アナと雪の女王」(原題:Frozen)や「ベイマックス」(原題:Big Hero 6)はご覧になっただろうか。ストーリーの説得力は当然ながら、CGにおけるモデリングやレンダリングに携わるものであれば、表現の丁寧さも注目に値する部分であろう。

 キャラクターの表情の作り込みとともに注目すべきは、「エフェクト」の緻密さだ。「アナと雪の女王」では雪や氷の表現、「ベイマックス」においてはマイクロボットの動きや飛行シーンにおけるスラスター(ジェット噴射)の煙など、あまりにも自然に作られているために気にも留めない部分に、ディズニーは大きな労力をかけている。それはなぜだろうか?

 本稿では「Autodesk University Japan 2015」における、米ウォルト・ディズニー・アニメーションズ Animation effects Animation Lead イアン・クーニー氏の講演「『アナと雪の女王』『ベイマックス』におけるエフェクトデザインおよびプレビズ 〜エフェクトおよびレイアウト間のクリエイティブコラボレーションのデザインプロセス〜」から、ディズニーが重要視する“プレビジュアライゼーション”を掘り下げていく。

米ウォルト・ディズニー・アニメーションズ Animation effects Animation Lead イアン・クーニー氏
米ウォルト・ディズニー・アニメーションズ Animation effects Animation Lead イアン・クーニー氏 ※画像クリックで拡大表示

失敗するなら早めに――プレビジュアライゼーションの重要性

 クーニー氏はまず、3DCGレンダリングソフト「RenderMan」の開発者にしてピクサーの社長であるエドウィン・キャットマル氏の言葉を引用した。

Don’t wait for things to be perfect before you share them with others. Show early and show often. It’ll be pretty when we get there, but it won’t be pretty along the way. ― Ed Catmull


 この言葉は、「完璧な仕上がりまで待つのではなく、早めに、何度も皆に見せること」――早い段階からしっかりとレイアウトやエフェクトを作ることで、基本的なデザインに問題があったとしても、早い段階で直せることを意味している。いわば「失敗するなら早めに」という意味合いだ。クーニー氏をはじめとするスタジオのメンバーが、プレビジュアライゼーションにこだわる理由はここにある。

 スタジオにおける制作のパイプラインは、「プリプロダクション」「アセットプロダクション」「ショットプロダクション」に大きく分けられる。プリプロダクションでは、イメージアートとして作られた「絵」から3DCGにおけるビジュアル開発を行い、アセットプロダクションではモデリング、キャラクターや小物の制作、その動きであるリギングを行う。それらのアセットを基に、ライティング、エフェクト、レイアウト、アニメーションを同時に行う。これらは「リーンプロダクション」と呼ばれ、日本における自動車の製造ラインと同じく日々「カイゼン」が行われているという。

 クーニー氏が携わる“エフェクトプレビズ”は、映画作りの最初の段階に当たるプリプロダクションから、完成形に近いエフェクトを表現し「早い段階で間違える」ことで、その間違いを排除し、カイゼンしようというアプローチで活動している。

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