無機物を主原料とする複合素材の普及拡大を目的とする協会を設立:材料技術
TBMなど4団体が、無機物を主な原料とする複合素材の普及、拡大を目指す「無機・有機複合マテリアル協会」を設立した。環境負荷を低減した社会に向けて、紙やプラスチックの代替品となる複合素材の標準化や認証活動を進めていく。
TBMは2020年11月2日、同社を含む4団体が、環境負荷を低減した社会に向けて、無機物を主な原料とする複合素材の普及、拡大を目指す「無機・有機複合マテリアル協会(Inorganic-organic Composite Materials Association:ICMA)」を設立したと発表した。
複合素材に関する指針を統一
資源の枯渇、プラスチックによる海洋汚染など、世界規模での環境問題が深刻化する中、プラスチックや紙といったこれまでの素材に代わる、新たな複合素材の利用が進んでいる。TBMでも石灰石(炭酸カルシウム)などの無機物を主原料とした複合材料「LIMEX(ライメックス)」を開発している。
しかし、こうした複合素材は定義や基準、再利用や処分などについて指針が統一されていないという課題を抱えている。この課題解決に向けて、任意団体ICMAが設立された。
TBMの他、ICMAに参画した団体は、三洋化成工業、石井食品、サステナブル経営推進機構。各団体は、枯渇リスクの低い石灰石などの無機物と有機物を組み合わせた複合素材の普及を通じて、環境問題に取り組むという目的に賛同している。なお、ICMAの会長は、三洋化成工業 代表取締役社長の安藤孝夫氏が務める。
ICMAは、無機物と有機物から成る複合素材を、これまで紙の製造が困難だった国や地域でも製造可能な紙の代替品素材として、あるいはプラスチック代替品として、一般消費者や企業、団体に広く認識してもらうことを目指す。資源の消費量抑制や資源循環を進める際は、現在、国際標準化に向けて動いているISO/TC 323 Circular economyの方針に沿いながら活動する。
主な検討事項として、無機物を高充填(じゅうてん)した複合素材に関して、紙やプラスチックの代替品として標準化すること、同素材および同素材を材料にした製品の認証基準を制定すること、同素材の法令上の分類を明確にすること、の3項目を掲げている。
また、同複合素材の普及を通じて、一般消費者を含むさまざまな立場の環境配慮活動を支援し、環境に配慮した製品から価値が創出されるよう働き掛けていく。
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