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学ぶのは技術だけじゃない、パナソニック流のモノづくり人材育成研修とは製造マネジメントニュース

パナソニックは2020年11月13日、同社のモノづくり人材育成を目的とした研修用施設「モノづくり研修所」の取り組みを紹介する記者説明会を開催した。高校卒技術系社員などを対象とした研修では、専門技術だけでなく、マネジメントスキルやコミュニケーションスキルの涵養を目指した教育プログラムを展開している。

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 パナソニックは2020年11月13日、同社のモノづくり人材育成を目的とした研修用施設「モノづくり研修所」の取り組みを紹介する記者説明会を開催した。同施設内では、高度な専門技術だけでなく、マネジメントスキルやコミュニケーションスキルの育成を目指した全寮制の教育施設などを運営している。

全寮制で1年間滞在、基礎技術などのスキル習得を目指す

 モノづくり研修所はパナソニックのイノベーション推進部門が管轄している施設で、大阪府枚方市に設置されている。主に、パナソニック社内外でモノづくりの現場に携わる人材の育成を担う。なお、プロフェッショナルビジネスサポート部門には新入社員の導入教育などを担う人材開発カンパニーが設置されており、社員研修業務においてはモノづくり研修所と互いに相補的に業務を進めている。


モノづくり研修所の組織構成図*出典:パナソニック[クリックして拡大]

 モノづくり研修所が担当する人材育成業務は、「学校教育」「モノづくり基盤強化」「公開研修」などに大別される。

 学校教育では新卒エンジニアなどを対象に、次世代の技術/製造リーダーの育成を目指して基礎的な生産/管理技術を学ぶ教育の場を提供する。例えば、入社1年目の高校卒社員を対象にした「モノづくり基盤研修」では、製図、機械加工、プレス加工、樹脂成型などの基礎技術習得を目的とする実習や演習など、各種基礎スキル養成プログラムなどを提供する。管理/エンジニアリング系スキルを学ぶ社員は50日間、機械加工系スキルは7カ月間にわたり専門コースを受講する。


モノづくり基盤研修の概要*出典:パナソニック[クリックして拡大]

 次世代の技術/製造リーダー層育成を目的とした、中堅社員用の全寮制教育施設も設置している。実務経験5年程度の高校卒技術系社員などを対象とした、国内技術者養成を行う「ものづくり大学校」と、海外の技術者育成を行う「工科短期大学校」がそれにあたる。技術力の育成だけでなく、問題解決力の習得や、経営や管理などのマネジメントスキル、コミュニケーションスキルなどを総合的に育成する教育プログラムを実施する。教育期間は1年間で、年間の学生数は、例えばものづくり大学校の場合は10人程度という。これに加えて、中国の「製造技術学院」では中国製造拠点で活躍するリーダー人材の育成などを進めている。


モノづくり大学校など教育施設に置ける学校教育の内容一例*出典:パナソニック[クリックして拡大]

パナソニックの登和則氏

 パナソニック イノベーション推進部門 モノづくり研修所 所長を務める登和則氏は「これらの教育施設では単に技術教育を行うだけでなく、技術者の『人間形成』を目的としたプログラムも取り入れている。夏期合宿訓練では企画、計画、準備、運営を学生が主体的にこなす。これらの作業プロセスはモノづくりの工程と似通う点が多く、リーダーシップの取り方など多くの学びが得られる」と説明する。

全社規模の「モノづくり競技大会」を毎年開催

 2つ目のモノづくり基盤を強化するための取り組みとしては、全社的な技術力向上を目的とした、パナソニック社内で年1回開催される「モノづくり競技大会」などが挙げられる。モノづくり競技大会は現在、「CAE」「工程品質改善」「セル生産」など50種類の競技プログラムを用意する。2019年の第56回大会ではパナソニック全社で予選参加者が6980人、予選を通過した成績上位者の大会では831人が参加した。また、競技大会以外にも、担当職種に必要な知識、スキルなどを客観的に評価するための社内検定や社内認定の施策も併せて推進しているという。


モノづくり大学校など教育施設に置ける学校教育の内容一例*出典:パナソニック[クリックして拡大]

 3つ目の公開研修は、パナソニックグループ全社を対象とした研修の取り組みだ。研修内容の一例を挙げると、模擬ライン上で一定時間内に目標生産数の確保などを図る「セル生産ムダ取り実践研修」や、IoT(モノのインターネット)システムを導入したパナソニックの工場を見学する「初めて学ぶ製造IoT(入門編)」などが用意されている。基本の部分を理解しようということでこうした取り組みを進めている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大以降は新たな研修の形として、リアルな拠点に集合せずにeラーニングで研修を行うオンライン研修の取り組みも推進しているという。

「セル生産無駄取り実践研修」(左)と「初めて学ぶ製造業IoT(入門編)」(右)*出典:パナソニック[クリックして拡大]

 モノづくり研修所での教育を通じて育成するモノづくり人材像について、登和則氏は「日本が海外の製造業と比べて優れていると感じる点は、安心安全な製品を大量生産する高度な技術を備えている点だ。企画から開発までをアジャイルに実施することも大事だが、製品の信頼性をいかにして確保するかということも重要だ。もう1点は、メンバー同士が協力して助け合いつつモノづくりを遂行できる点だ。パナソニックではヒエラルキー型ではなく、ネットワーク型の人材育成プログラムを実施しており、チーム内で適切なコミュニケーションをとりながら目的を果たす重要性を学ぶ機会を提供している。こうした技術者を育成することが、国内のモノづくり産業にとって重要になってくるだろう」と語った。

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