評価技術で商品企画も支援、パナソニックを支える「プロダクト解析センター」:製造マネジメントニュース
パナソニックは2020年10月2日、同社製品などの解析や科学的評価を担当する部門「プロダクト解析センター」の説明会を開催した。製品解析評価を行うだけでなく、各種解析技術を基盤に製品開発を促進させるための新技術、新材料の提案なども行う点を特徴とする。
パナソニックは2020年10月2日、同社製品の解析や、安全性や信頼性評価などを担当する部門「プロダクト解析センター」の説明会を開催した。同センターは製品の解析や評価を行うだけでなく、各種解析技術を基盤とした新技術、新材料の提案なども併せて行う点を特徴とする。
評価技術をコアに、商品企画や設計にも参加
プロダクト解析センターはパナソニックのプロフェッショナルビジネスサポート部門に設置された組織で、パナソニックグループ各社にある品質部門の分析支援を行う他、技術部門と連携した新技術開発も手掛ける。
プロダクト解析センターの原点は、2005年に設置された「松下電工解析センター」にさかのぼる。その後、2012年にパナソニック、パナソニック電工、三洋電機の3社から100人メンバーを招集して組織を形成。2016年に「プロダクト解析センター」に名称変更を行い現在に至る。国内拠点は大阪府の門真/守口エリアに2箇所、兵庫県の篠山エリアに1箇所設置している。また、海外ではタイやマレーシアにも「営業窓口」を設置しており、主に東南アジアにあるパナソニックの拠点から依頼を受け付けている。現在、センターでの売り上げは年間約30億円に上るという。
主な役割は、研究/技術開発領域を手掛けるイノベーション推進部門と、商品/マーケティング戦略構築を担うカンパニー部門の「橋渡し」にある。イノベーション推進部門が研究/開発を進める新材料や要素技術を、人間工学や化学、物理、電気、バイオ、機械分野など8つの解析評価技術を総合した「高度解析基盤技術」で解析/評価する。また、この解析評価技術を基に、カンパニー部門の商品企画や設計にも参画して、製品の高付加価値化に必要な課題解決や新提案を行い、製品開発プロセスの高速化や、製品の完成度向上を目指す。
「ユーザビリティ」など8分野のコア技術を保有
プロダクト解析センターが保有する解析評価技術は「ユーザビリティ」「材料分析」「EMC」「電子回路解析」「デバイス創造」「電気・人体安全」「バイオ評価」「信頼性」の8分野に分類される。例えば、ユーザビリティ分野においては、製品使用時にユーザーが体験する「心地よさ」など主観的感覚を、圧分布解析や視線解析、脳波解析、筋電図解析などの手法を駆使して定量化する。この他にデバイス創造では、マルチフィジックスCAE技術などを用いた開発手法の研究や、デバイスの試作、開発に取り組んでいる。EMC認証試験の他、温湿度試験や振動試験、HALT(高加速限界試験)による製品の信頼性実証も手掛ける。
こうした解析技術の組み合わせによって、新たな顧客価値を持つ製品開発を目指す。パナソニック プロダクト解析センターの所長を務める難波嘉彦氏は実際の開発事例としてシェーバーの新規デザイン開発時の話題を取り上げた。「シェーバーに搭載するモーターを小型化して、ヘッド部分の可動域を拡張しようとする計画があった。この時は、マルチフィジックス解析やIC信号波形予測法などを駆使して、シェーバーの動的性能を分析するとともに、AI(人工知能)を活用してモーター内の磁力アップを実現する新構造の導出まで行った。加えて、人間工学を基にしたシミュレーション技術によって、最適な握り心地をユーザーに提供するグリップ開発も担当した」(難波氏)。この他にも、接触時の衝撃を従来よりも低減する安全性の高いロボット開発の支援や、美容/健康製品の効果を化学的、生物学的な手法で定量化する研究なども行っているという。
難波氏は「プロダクト解析センターはパナソニックグループには所属するが、当組織には『自分たちの日銭は自分たちで稼ぐ』という自活の文化、意識が浸透しており、社内外を問わず依頼は基本的に有償で引き受けている。同時に当センターでは、『2〜3年先のカンパニーを支える』という支援の目標も掲げている。事業部単位では開発困難な製品も、当センターとの連携で実現に近づくよう、引き続き取り組みを進めていく」と語っている。
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