CASE時代到来で高まるECUの安全性試験ニーズに対応、愛知県にEMC試験場を新設:車載電子部品
テュフ ラインランド ジャパンは2020年7月30日、ECUのEMC/無線試験を実施するための「モビリティ技術開発センター(MTC)」を愛知県知立市に設置し、同年8月1日から稼働すると発表した。EMI/EMS試験の他、SRD(短距離デバイス)の無線試験を施設内で実施可能。自動運転車やコネクテッドカーの将来的な需要増加に伴い、増加が見込まれる高度なEMC試験の実施にも対応できる施設にする。
テュフ ラインランド ジャパンは2020年7月30日、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)のEMC(電磁両立性:Electromagnetic Compatibility)/無線試験を実施するための「モビリティ技術開発センター(MTC)」を愛知県知立市に設置し、同年8月1日から稼働すると発表した。MTCでは電磁波のEMI(電磁気妨害:Electromagnetic Interference)試験とEMS(電磁気妨害感受:Electromagnetic Susceptibility)試験に加えて、SRD(短距離デバイス:Short Range Device)の無線試験を実施できる。
CASE時代の法規水準に合わせた安全性試験が可能に
MTCは知立市にある知立駅から徒歩10分程度の場所に設立される。施設内にはEMI/EMC試験などを実施する電波暗室が合計2室と、無線試験用の電波暗室が1室、加えてシールドルームが1室設けられている。この他にもフリーフィールド試験が可能なアンプ室や、大人数での打ち合わせも可能なセミナールームなどもある。
MTCを新設した理由について、テュフ ラインランド ジャパン 運輸交通部部長の有馬一志氏は「いわゆるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)時代の到来により、ECUのEMS試験ニーズが大きく高まることを見込んだためだ」と説明する。CASE時代には自動運転車やコネクテッドカーの増加に伴い、クルマ1台に搭載されるECUの数が増えるだけでなく、ECUの性能も高度化することが予測されている。有馬氏は高度なECUが増加するにつれて、安全性の適合判断にもより高度な技術的、法的根拠に基づいた試験設備が求められるようになると指摘する。
「法規的にも整備が進んでいる。2020年6月24日には自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で、車両部品に適用されるEMC法規『国連規則第10号(UNR10)』が成立した。同時期に成立したEMC要件を含む法規は他にも大量にあるが、その内容はBAS(ブレーキアシストシステム)や車線逸脱防止装置など多岐にわたり、適合判定要件もそれぞれ異なる。将来的に増加が見込まれるこれらの試験ニーズに応えるべく設立したのがMTCということになる」(有馬氏)
壁面のスクリーンでADAS試験にも対応
電波暗室でのイミュニティ試験は、放射イミュニティ200V/mまでの電界強度の試験に対応する。法規的に要求される水準は30V/mだが、自動車メーカーが要求するスペックが200V/mのため、この仕様にしたという。エミッション測定においてはダブルログペリオディックアンテナやホーンアンテナを用いることで、80MHzから6GHzまでの周波数帯が測定可能だ。また、1.2〜1.4GHzおよび2.7〜3.1GHzまでの試験に対応可能な航空レーダーパルス用の試験装置や、それぞれ250V/mまでと200Vまでの試験が可能なトリプレート試験装置とストリップライン試験装置も備えている。
また、電波暗室の壁面にはスクリーンが設置されている。実際の走行をシミュレーションした映像を流し、それを試験対象品と連携させたカメラで撮影することで、ADAS(先進運転支援システム)やデジタルミラーの試験も実施可能だという。
シールドルームにはワイヤハーネスに磁界ノイズを与えるBCI(束線電流注入)試験や、磁界ノイズによる試験品の誤作動を確認するTEMセル試験を行う。BCI試験は0.1MGHz〜2GHzで200mAまでの試験に、TEMセル試験は0.01〜400MHzで200V/mまでの範囲の試験に対応できる。
他社のEMC試験場と比較した際の強みについて、有馬氏は「当社はドイツ運輸省の自動車認可局に、型式認証を行える技術機関として認定されている。自動車認可局は、国内でいえば国土交通省の自動車審査部と同等の組織である。この認定があるからこそ、当社はほぼ全ての車両メーカーや部品メーカーについて、欧州型式認証に関わる審査業務が実施可能で、まさにこの点がMTCの強みだ」と説明した。
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