ニュース
製鉄会社がMR技術を活用した教育訓練シミュレーターを導入:製造IT導入事例
JFEスチールは、MR技術を活用した教育訓練シミュレーターを同社の西日本製鉄所へ導入した。訓練シミュレーターによってOJT前に訓練することで、従来よりも操業、安全リスクを低減でき、異常事態での判断や措置も迅速に行える。
JFEスチールは2020年10月5日、MR(複合現実)技術を活用した教育訓練シミュレーターを同社の西日本製鉄所(広島県福山市)へ導入したと発表した。
同社では、製造現場の世代交代における技能レベルの維持、向上に対応するため、教育専任者を配置して技術伝承を進めてきた。しかし、現場作業の一部は安全性リスクが高く、熟練に必要なOJTを若手社員に実施させるには安全上の問題があった。
このような課題を解決するため、同社では連続鋳造機での溶鋼鋳込み量調整作業に関する訓練シミュレーターを開発。MR技術を活用することで、コンピューター上に再現されたバーチャルな工場と、現実世界の人の動きを融合した訓練環境を構築した。
定常的な操業状態に加えて非定常の事象を再現できるため、予期しない操業の変化や異常事態に対する訓練も、実際の作業と同様の環境で行うことができる。また、必要に応じてシナリオを簡単に追加可能で、ノズルの閉塞現象など、さまざまな異常事態に対する訓練を実施できる。
今回の訓練シミュレーターを用いてOJT前に訓練することで、従来よりも操業、安全リスクを低減でき、異常事態での判断や措置も迅速に行えるという。今後は同訓練シミュレーターを全製鉄所、製造所に展開することで、若手社員への熟練技能伝承をさらに推進する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 工場見学もバーチャルに、キリンとJALの工場でMR技術使って実施
日本マイクロソフトはコラボレーションツール「Microsoft Teams ライブイベント」とMixed Reality(複合現実)技術である「HoloLens 2」を活用し、見学者目線の工場見学をリアルタイムで遠隔地に配信する「おうちで工場見学を楽しもう!!リモート社会科見学」を開催。2020年6月27日には第1弾となるキリンビバレッジ湘南工場、同年6月28日にはJAL羽田整備工場において実施した。 - 3D CADで作った3Dデータを生かし切るVRとARの進化
AI(人工知能)と同じく2016年にブームを迎えたVR(仮想現実)。2017年以降、このVRが、製造業や建設業の設計開発プロセスに大きな変化を与えそうだ。AR(拡張現実)についても、「デジタルツイン」をキーワードに3D CADで作成した3Dデータの活用が進む可能性が高い。 - 「VR=仮想現実感」は誤訳!? VRの定義、「製造業VR」の現状と課題
製造業VR開発最前線 前編では、VRやAR、MRの概要、製造業向けVRの他の分野のVRとは異なる特徴、これまでの状況などを説明する。 - 半導体製造装置立ち上げをMRで遠隔支援、ASMLがコロナ禍で強化
SEMI(国際半導体製造装置材料協会)は2020年8月25日、「第6回 SEMI Japanウェビナー」を開催。「How ASML cope with COVID-19, and ASML EUV industrialization update」をテーマにASMLジャパン 代表取締役社長の藤原祥二郎氏とASMLジャパン テクニカルマーケティングディレクターの森崎健史氏が登壇し、コロナ禍における事業環境と、EUV(極端紫外線)露光装置の開発および導入状況について説明した。 - MR技術も生かした「AGVの目」、デファクトスタンダードを狙うキヤノンの自信
労働人口減少が進む中で工場でもAGVへの注目が高まっている。その中で「AGVの目」に新たに参入したのがキヤノンだ。新たに投入した映像解析ソフトウェア「Vision-based Navigation System for AGV」のポイントについてキヤノンに聞いた。 - 難加工鋼材の活用を設計段階から支援、上流へとカバー領域広げるJFEスチール
JFEスチールは「オートモーティブワールド2020」(2020年1月15〜17日、東京ビッグサイト)において、自動車用鋼板の開発技術を体系化しソリューションとして提供する「JESOLVA(JFE Excellent SOLution for Vehicle Application)」を訴求。加工が難しい鋼材などが増える中で、従来の素材提供だけではなく、設計フェーズから入り最適な鋼材活用をサポートする価値を訴えた。