難加工鋼材の活用を設計段階から支援、上流へとカバー領域広げるJFEスチール:オートモーティブワールド2020
JFEスチールは「オートモーティブワールド2020」(2020年1月15〜17日、東京ビッグサイト)において、自動車用鋼板の開発技術を体系化しソリューションとして提供する「JESOLVA(JFE Excellent SOLution for Vehicle Application)」を訴求。加工が難しい鋼材などが増える中で、従来の素材提供だけではなく、設計フェーズから入り最適な鋼材活用をサポートする価値を訴えた。
JFEスチールは「オートモーティブワールド2020」(2020年1月15〜17日、東京ビッグサイト)において、自動車用鋼板の開発技術を体系化しソリューションとして提供する「JESOLVA(JFE Excellent SOLution for Vehicle Application)」を訴求。高張力鋼板(ハイテン)など、加工が難しい鋼材などが増える中で、従来の素材提供だけではなく、設計フェーズから入り最適な鋼材活用をサポートする価値を訴えた。
難加工材の採用をシミュレーション技術で支援
JFEスチールでは、1470MPaクラスの超高強度鋼板を開発し提供を行うなど、ハイテンの提案を積極的に進めている。しかし一方で鋼板強度が高まれば高まるほど、スプリングバックの増大など、加工の難しさは増すことになる。自動車メーカーにとっても燃費性能へのニーズが高まる中で軽量化を進めるために超高強度鋼板の採用を広げる意向はあるものの、加工が難しいために採用が限られる状況が生まれていた。
そこで、JFEスチールでは、以前から行う鋼材提供などに加えて、自動車開発の設計初期段階から入り込み、同社の鋼材の性能を有効活用できるように支援する、EVI(Early Vendor Involvement)活動を強化。その過程でさまざまなシミュレーションツールを用意し、自動車の設計開発効率化や性能向上に貢献していく方針である。
2019年12月にはこれらの取り組みを体系化した「JESOLVA(JFE Excellent SOLution for Vehicle Application)」を発表。ハイテンなど高機能鋼材をより幅広い領域で使えるように支援する。「JESOLVA」は、車体設計を支援する「Design」、部品に成形する「Forming」、部品同士を接合する「Joining」の3つのグループで構成され、同社の鋼材製造において培ったノウハウを生かし、さまざまなシミュレーション技術などを用意している点が特徴である。例えば、設計領域では軽くて強い車体構造を創出するトポロジー最適化技術、部品成形領域で複雑な形状を高精度に成形する最適予成形技術などだ。これらを活用し、自動車メーカーと共同で製品開発を進める。
「従来の当社は自動車メーカーに対して鋼材を納入することが中心だった。上流工程で協力するという場合でも、量産設計など生産技術部門との関係にとどまり、設計部門とは縁遠い関係だった。ただ、ハイテンなどの難加工材が増えている点や、これらを開発するためのデジタルツールが充実してきた点などが追い風となり、設計段階から一緒に、素材の最適な活用方法や加工方法を検討できるようになってきた。これらの取り組みにより、鋼材の実力をより引き出せるようになり、自動車そのものにもさまざまなメリットを生み出せるようになっている」と説明員は語っている。
材料技術とデジタルツールを組み合わせて提供する価値
既にこれらの取り組みは先行的事例としてさまざまな成果を生んでいるという。1つの成果として挙げられるのが、スズキとの協業による「スイフトスポーツ」での採用だ。具体的には設計手法としてトポロジー最適化を採用した。これにより、従来に比べ少ない部品重量で衝突安全性能向上を実現できたという。
その他、ドアパネルの開発では、トポロジー最適化技術と複数素材を利用するマルチマテリアル化を組み合わせることで、薄肉化で12%の軽量化を実現しつつ61%の剛性向上を実現したケースもあるという。
「材料技術と加工技術を組み合わせて提案することで、従来は実現できなかった新たな価値を作り出すことができる。自動車メーカーも現在はデジタル技術を活用した製作レス化を進めており、これらに合わせたシミュレーション技術を強みに、パートナーとして共同で価値を創出できるように取り組んでいく」(説明員)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 鉄鋼製造はスマートファクトリーとの相性抜群、JFEが取り組む製造データ活用
技術商社のマクニカは2018年7月12〜13日、ユーザーイベント「Macnica Networks DAY 2018」を開催。その2日目にはJFEスチール スチール研究所 計測制御研究部 主任研究員(副部長)の茂森弘靖氏が登壇し「データサイエンスによる鉄鋼製品の品質管理の革新〜多工程リアルタイムセンシングデータの活用による価値の創出〜」をテーマに、局所回帰モデルを用いた鉄鋼製品の品質設計と品質制御により、品質向上や製造コストの削減を達成した事例を紹介した。 - トポロジー最適化で衝突安全性能や車体剛性を向上、JFEスチールの取り組み
JFEスチールは「第9回 クルマの軽量化技術展」(2019年1月16〜18日、東京ビッグサイト)において、スズキや三菱自動車に提供したトポロジー最適化技術を披露した。スズキ「スイフトスポーツ」、三菱自動車「アウトランダーPHEV S Edition」「エクスパンダー」「エクリプスクロス」に採用されている。 - トポロジー最適化、なぜ今なの? 寸法最適化や形状最適化との違いは?
本連載「トポロジー最適化とは何か」を通して、設計の中でトポロジー最適化をどのように生かしていけるのかを探求しつつ、少しでも記事を読んでくださる皆さまのお役に立ちたいと思っています。 - 「トポロジー最適化」「メッシュレスCAE」とは何か――最新のCAD・CAE動向
機械メーカーで3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回はCAEの最新技術について紹介する。 - トポロジー最適化だけじゃない、将来はIoTでコンピュータが自発的にデザイン
オートデスクは同社が研究中である新モデリング技術のジェネレーティブデザイン(自己生成的デザイン)について、概要やパートナーとの開発事例について紹介した。同社の新しいオフィスのレイアウト検討でも、研究の一環としてジェネレーティブデザインを利用した。IoTの仕組みで取得したビッグデータも活用できるよう研究中だという。 - 自動車構造部品をさらに軽量化、JFEスチールが高炭素熱延鋼板の加工性を向上
JFEスチールは、新たに高炭素熱延鋼板「スーパーホット-G」を開発した。従来品の「スーパーホット-F」を上回る加工性を実現しながらも、高炭素熱延鋼板の特徴である焼き入れ硬さを維持した。自動車の構造部品の軽量化が可能になるという。