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半導体製造装置立ち上げをMRで遠隔支援、ASMLがコロナ禍で強化モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

SEMI(国際半導体製造装置材料協会)は2020年8月25日、「第6回 SEMI Japanウェビナー」を開催。「How ASML cope with COVID-19, and ASML EUV industrialization update」をテーマにASMLジャパン 代表取締役社長の藤原祥二郎氏とASMLジャパン テクニカルマーケティングディレクターの森崎健史氏が登壇し、コロナ禍における事業環境と、EUV(極端紫外線)露光装置の開発および導入状況について説明した。

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 SEMI(国際半導体製造装置材料協会)は2020年8月25日、「第6回 SEMI Japanウェビナー」を開催。「How ASML cope with COVID-19, and ASML EUV industrialization update」をテーマにASMLジャパン 代表取締役社長の藤原祥二郎氏とASMLジャパン テクニカルマーケティングディレクターの森崎健史氏が登壇し、コロナ禍における事業環境と、EUV(極端紫外線)露光装置の開発および導入状況について説明した。

コロナ禍でも好調を持続するASML

 ASMLはオランダに本社を置く半導体露光装置の世界最大手の企業である。従業員数は約2万5000人でその内9500人がR&D(研究開発)を行うエンジニアだという。売上高は118億ユーロ(約1兆4839億円、2019年)で、20億ユーロ(約2516億円)をR&D費用に充てているという。

 半導体製造装置業界は、5GやIoT関連デバイスの拡大による半導体需要の好調を持続している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しても移動が制限されテレワークなどが拡大する中でデータセンターを強化する動きなどが進み、影響を抑えた形で成長が持続すると見られている。

 COVID-19の事業への影響について、藤原氏は「中国向けの顧客向けで出荷の遅れがあった他、サプライチェーンに対する影響で新製品であるEUV露光装置『NXE:3400C』の立ち上げも遅れた。また、出荷前最終検査が行えず、通常の最終検査なしに出荷したケースがあった」と語っている。ただ、マイナスの影響はわずかにとどめており、2020年7月に公開した2020年第2四半期(4〜6月)決算では、売上高は前年同期比で約30%増という結果を示している。通期でも「二桁成長を達成できるレベルだ」(藤原氏)とするなど、順調な業績を示している。

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ASMLの第1四半期と第2四半期の業績をブレークダウンしたもの(クリックで拡大)出典:ASML

MRデバイスで半導体製造装置の立ち上げや改造を遠隔支援

 ただ、半導体露光装置に対する引き合いは強いものの、導入や立ち上げを進めようとしてもCOVID-19による移動制限で、ASMLからも熟練技術者を派遣できない状況が生まれたという。そこで、コロナ禍における対応として強化を進めているのが、リモートサポートの強化である。

 「リモートサポートについては以前から取り組んでいたが、従来はユーザー側の装置とグローバルサポートセンターを結んで情報を取得し監視や管理を行うものだった。主に診断用途で使うことが多かった。しかし、実際に技術者を派遣できなくなったため、専門性が必要な実作業を遠隔でどう支援するのかということが大きな課題となった。そこで、MR(複合現実)デバイス『Microsoft HoloLens(以下、HoloLens)』を活用し現場での実作業を支援する取り組みを開始し積極的に展開している」と藤原氏は語る。

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HoloLensを付けた現場の作業員とつなぎ、ASMLの熟練技術者が、現場の装置の立ち上げや改造などの作業を支援する様子(クリックで拡大)出典:ASML

 既に75台以上のHoloLensをアジア、北米、欧州などで使用し実績を残しているという。「日本でも複数の顧客で既に使用している。実作業を直接支援できるところが従来のリモートサポートとは大きく異なるところだ。MRデバイスもさらなる技術進化が見込まれており、リモートサポートが行える領域も今後さらに広がるだろう」と藤原氏は述べていた。

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MRデバイスによる遠隔支援システムの構成(クリックで拡大)出典:ASML

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