半導体製造装置立ち上げをMRで遠隔支援、ASMLがコロナ禍で強化:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
SEMI(国際半導体製造装置材料協会)は2020年8月25日、「第6回 SEMI Japanウェビナー」を開催。「How ASML cope with COVID-19, and ASML EUV industrialization update」をテーマにASMLジャパン 代表取締役社長の藤原祥二郎氏とASMLジャパン テクニカルマーケティングディレクターの森崎健史氏が登壇し、コロナ禍における事業環境と、EUV(極端紫外線)露光装置の開発および導入状況について説明した。
3nmを目指したEUV露光装置のロードマップ
また、技術動向に注目が集まるEUV露光装置について、森崎氏が説明。サムスン電子などがEUV露光装置を使って製造した半導体を最終製品に搭載していることを紹介し「既にEUV露光装置を使った半導体が、われわれの生活の身近なところまで届くようになっている」と利用が広がっている点を強調した。
実際に同社のEUV露光装置「NXEシリーズ」の導入は拡大しており、各四半期で見ても導入台数は増えている。ASMLでは2020年の第1四半期は57台を導入したが、第2四半期は66台まで拡大している。EUVで製造したウエハー枚数も累計で1100万枚まで増えているという。「EUV露光装置は未来のものだといわれてきたが、既に現実的に製品として使える段階に入っている」と森崎氏は語っている。
一方で、EUV露光装置にはまだ課題が多いことも事実だ。最大の問題は信頼性の問題である。「上位10%の装置は稼働可能率が90%程度だが、平均では85%程度である。下位10%は稼働可能率にも大きなばらつきがあり『もっとちゃんと動いてほしい』というのが顧客の要望だといえる。装置間のばらつきを減らし、平均値でも90%以上は確保できるようにしていく」と森崎氏は述べる。個々の装置や部品の精度向上に加えて、光源モジュールのアップデートを進め、スズの継続供給を行える仕組みなどを開発。ダウンタイムを減らして稼働時間を増やす取り組みを進めているという。
また現在展開する「NXEシリーズ」は光学系の開口率(NA)が0.33で、7nmおよび5nm世代をターゲットとしている。さらにその先の3nmを目指す中で、現行の技術でも解像度に限界が見えているために、開口率を高めた0.55の“HiNA”製品ラインを用意するため現在準備を進めている。既に設計は終え、現在具体的な開発を進めている段階だという。開口率0.55の製品は「EXEシリーズ」と名付けられ、R&D向けに2022年、量産向けでは2024年に出荷することを目指す。
0.55NAプラットフォームの意義として森崎氏は「プロセスのシンプル化とデバイスパフォーマンスの改良ができ、マルチパターニングに比べて50%のコスト削減につなげることができる」と価値について語っている。
一方で開発の難しさについても語る。「現在は光学系を中心に開発を進めているところだが大型化と精度を両立させるのに苦慮している。イメージ的には日本の国土くらいの面積を髪の毛一本程度の精度で管理するというものになる」と森崎氏は述べる。また、EUV露光装置のみで新たなプラットフォーム環境は作れないため、インフラサプライヤーとの協力で新たな環境構築を進めていく方針を示している。
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