工場見学もバーチャルに、キリンとJALの工場でMR技術使って実施:スマートファクトリー
日本マイクロソフトはコラボレーションツール「Microsoft Teams ライブイベント」とMixed Reality(複合現実)技術である「HoloLens 2」を活用し、見学者目線の工場見学をリアルタイムで遠隔地に配信する「おうちで工場見学を楽しもう!!リモート社会科見学」を開催。2020年6月27日には第1弾となるキリンビバレッジ湘南工場、同年6月28日にはJAL羽田整備工場において実施した。
日本マイクロソフトはコラボレーションツール「Microsoft Teams ライブイベント」とMixed Reality(複合現実)技術である「HoloLens 2」を活用し、見学者目線の工場見学をリアルタイムで遠隔地に配信する「おうちで工場見学を楽しもう!!リモート社会科見学」を開催。2020年6月27日には第1弾となるキリンビバレッジ湘南工場、同年6月28日にはJAL羽田整備工場において実施した。
「午後の紅茶」ができるまでをMRで見学
現在、JALとキリンビバレッジでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため工場見学を休止している。その代替策として今回は、普段直接来場しにくい全国各地(米国、台湾など一部海外からの参加者あり)の未就学児を含む子どもや家族が参加し、最新テクノロジーの活用により双方向でリアルな工場見学を体験した。「HoloLens 2」を工場にいる見学者役が装着し「Microsoft Teams ライブイベント」と連携させ、参加者が見ている工場の映像に、遠隔地にいる従業員の顔が重ね合わせて表示され、表情を見ながら設備について会話する感覚を体験できるようにした。
キリンビバレッジ湘南工場では、同社の人気商品である「キリン 午後の紅茶」ができるまでの様子を、製造工程を身近に体験できるような形で紹介した。また、製造工程のイラストが描かれた「見学ノート」を特設ページから印刷することで、穴埋めに書き込み製造工程についてクイズもまじえ、理解しながら工場見学を楽しめるような工夫なども行った。
キリングループの工場は、ソフトドリンク向けが神奈川県(湘南工場)と滋賀県の2カ所で、この他に、ビール工場が北海道から福岡県まで9カ所、ウイスキーの醸造所が静岡県御殿場市にある。湘南工場では「午後の紅茶」の他、「キリン 生茶」「ソルティライチ」などのペットボトル飲料を製造している。約240人の従業員が24時間の操業体制を敷いており、年間40種類9億本の商品を製造しているという。
「午後の紅茶」については、ペットボトルの成形から茶葉からの抽出、調合、充填(じゅうてん)、ラベルの包装、品質管理検査までを一貫して行う。工場見学は、「午後の紅茶」の名前の由来や使っている茶葉などを紹介した資料コーナーから開始。続いてニーダーという抽出器(巨大なポット)で、紅茶の茶葉と湯を入れて蒸らし紅茶を作る工程(1度に500ミリリットルのボトルで約2万5000本が製造できる)などを見学した。また、ペットボトル容器を、元になる小さなプリフォームからブロー成形機により成形する工程(1分間に約600本を製造)なども紹介した。
さらに「HoloLens 2」を着用した案内スタッフの目線で、無菌室でのフィラーで飲料の重さを測りながらボトルに詰める(1分間に600本のスピード)作業や、キャッパーという機械を使って、ペットボトルにキャップを付ける作業を含めた無菌充填工程なども近い距離で見られるようにしていた。その他、アキュームコンベヤーで、キャップを付けたペットボトルを搬送したあと、ラベラーでラベルをかぶせ、蒸気(じょうき)トンネルを通し、熱でラベルを縮ませることで、ペットボトルにラベルを張り付ける工程なども紹介した。
「エアバス A350」の期待を間近に見て紹介
一方、JALでは第2格納庫で航空機が整備される様子をライブ中継で、整備担当者が解説。チャット機能を使って見学者からの質問も受け付けた。JALの航空機の格納庫サイズは正面の幅が195m、奥行きが105m、高さは最高地点で41mある巨大な施設だ。1度に航空機を最大5機格納可能で、ここで安全運航に欠かせない飛行機の定期点検や整備作業を実施している。
見学当日は、JALが所有する機体の中で最も新しく2019年9月に導入したばかりの「エアバス A350」の3号機(同機は6台を所有)を紹介した。「A350」は全長66.8mで369の座席があり、全座席に電源コンセントや充電用USB端子、個人画面などが搭載されている。エンジンは低騒音、高燃費などの特徴があるロールス・ロイスの「トレントXWB」を採用している。
見学では同機体の気象用レーダーが収納されているノーズレドームや主翼の先端部分(ウイングレット)などの機能を説明した。さらに、通常では近づけないため、詳細に見ることができない機体の映像を整備士が「HoloLens 2」を装着して紹介(当日は電波状況が悪く、ライブではなく収録した映像を使用)した。実際にノーズギア(前輪)、メインギア、尾翼周辺などを間近に映し、ノーズギアの機能や周辺部品などを解説した。
また、メインギアは着陸時に使用するブレーキにより300〜400℃にまで上昇するため、その熱を冷やすクーラー(扇風機)が付いているなどの独自の仕組みや、機体の最後尾には推進用エンジンとは別に圧縮空気や電力などを供給する小型エンジンATU(補助動力装置)の排気口があることなど、通常では知り得ない情報なども説明があった。
見学者からは体験を通じて「雨の日の機体チェックには(晴れの日と比べて)項目が増えるか」「A350には窓がいくつ付いていているか」「機体の寿命はどれくらいか」「機体の価格は」「一機の部品点数は」「整備士になるにはどんな勉強をすればよいか」などの質問が寄せられた。これに対して「JALでは機体を25〜30年間運用している」「部品の点数は300万点」などと回答していた。
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