検索
ニュース

トヨタがマイクロソフトとMRの提携を拡大、進化遂げた「HoloLens 2」も採用へde:code 2019 基調講演(1/2 ページ)

日本マイクロソフトが開発者向け年次イベント「de:code 2019」を開催。初日の基調講演では、トヨタ自動車とのMR(複合現実)関連の提携拡大を発表した他、2019年後半発売予定の「HoloLens 2」の開発をけん引するアレックス・キップマン氏が登壇した。

Share
Tweet
LINE
Hatena
日本マイクロソフトの平野拓也氏
日本マイクロソフトの平野拓也氏

 日本マイクロソフトが開発者向け年次イベント「de:code 2019」(2019年5月29〜30日)を開催。初日の基調講演では、クラウドプラットフォーム「Azure」やオフィス向けスイート「Microsoft 365」、統合開発環境「Visual Studio」、2019年後半の発売を予定している「HoloLens 2」を含めたMR(複合現実)などの最新技術について、来日した米国本社の担当者が紹介した。

 基調講演冒頭に登壇した日本マイクロソフト 社長の平野拓也氏はまず、興福寺の阿修羅像をスクリーンに投影。奈良大学と共同で、学習済みAI(人工知能)サービス「Congnitive Servies」により推定年齢や感情を割り出す研究を行ったことを紹介した。そして次に、火災による大規模な焼損の修復を目指しているノートルダム大聖堂の写真を示し、GitHubに集めた3DデータからAIなどを用いて修復に貢献する「オープンノートルダムイニシアチブ」に取り組んでいることも取り上げた。

奈良大学と共同で研究を行った興福寺の阿修羅像
奈良大学と共同で研究を行った興福寺の阿修羅像(クリックで拡大) 出典:日本マイクロソフト

 その上で平野氏は「AIは一部の人のものではなく、全ての人が使えるものだ。家庭から職場、工場などさまざまな場所で役立つ。このことは、de:code 2019に参加する開発者やITエンジニアにとって、AIが多くの機会をもたらすことを意味する」と語る。

トヨタは自動車の整備に「HoloLens 2」を活用

 2019年春以降、マイクロソフトはさまざまな企業との提携を発表している。平野氏は、Red HatやAdobe、Dell、そしてソニーなどとの提携を紹介した後、トヨタ自動車とMRやHoloLens 2を用いた新たな取り組みを始めることを発表した。

 日本マイクロソフトとトヨタ自動車は2018年11月に、「塗装の膜厚検査での活用」や「試作工場の設備移設での活用」についての取り組みを発表している。これらの取り組みでは、HoloLensのアプリとして「Dynamics 365 Remote Assist」や「Dynamics 365 Layout」を用いていた。

 今回発表した新たな取り組みは、自動車整備で行われる修理、点検業務向けになる。現在、自動車の整備作業では、車種ごとに用意されている紙ベースの作業手順書や修理書、Webベースのマニュアルを用いている。今回の取り組みでは、これらの作業手順書、修理を、HoloLens 2で利用できる3Dの作業手順書、修理書に置き換えることを目的としている。整備士にとって、作業を行う自動車の前に立ち、該当する車種の3Dの作業手順書、修理書を参照できるので直感的に理解しやすくなるというメリットがある。また、頭に装着するHoloLens 2であれば、両手で作業を行いながらデジタル情報に容易にアクセスできる。

 なお、作業手順のガイダンスは、新たに追加されたHoloLensのアプリである「Dynamics 365 Guides」を用いている。この他にも、「Azure AI」を活用して、作業ミスや作業漏れを検出する機能の開発や検証をマイクロソフトと実施している。通常のAIの学習プロセスとは異なり、自動車の3D CADデータから自動で学習モデルを生成して、開発期間の短縮も目指そうとしている。

トヨタ自動車との提携内容
トヨタ自動車との提携内容。「HoloLens 2」だけでなく、「Dynamics 365 Guides」や「Azure AI」も活用する(クリックで拡大) 出典:日本マイクロソフト

 現在、この3D作業手順書、修理書は、トヨタ自動車が独自にアプリケーションを開発し社内で検証している段階。2019年内には、HoloLens 2を導入した上で、トヨタ自動車販売店に順次展開する予定だ。

国内自動運転スタートアップと提携

アセントロボティクスの石崎雅之氏
アセントロボティクスの石崎雅之氏

 さらに平野氏は、自動運転や産業用ロボット向けAIソフトウェア開発を手掛ける国内スタートアップのアセントロボティクスと提携したことも発表した。アセントロボティクスは、マイクロソフトのスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」に参加し、Azureを活用した技術開発を進めることになる。

 講演に登壇したアセントロボティクス 代表取締役の石崎雅之氏は「自動運転車は、まだ限られた空間内でしか実現できていない。現在の技術では、他の車両や歩行者、自転車などと安全安心に共存できないからだ」と語る。

 アセントロボティクスのAIは、めったに起こらない事象を学習できる仮想空間でのシミュレーション技術や、神経科学や物理学、確率制御、確率モデル、深層強化学習に基づく機械学習技術、そしてAIの認知判断結果をトレースしてホワイトボックス化することによる説明可能性を特徴とする。「これらのAI開発でデータを扱うためにはクラウドプラットフォームが必要だ。そのためにはAzureを選んだのは、幅広いスケーラビリティとAI関連のサービスラインアップの充実が理由になる」(石崎氏)という。

アセントロボティクスの独自性
アセントロボティクスの独自性(クリックで拡大) 出典:アセントロボティクス

 なおアセントロボティクスは、自動運転技術とは別に、2019年末〜2020年にかけて産業用ロボット向けAIソリューションを投入する計画だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る