次世代ゲーム機に求められる触覚フィードバック、「三原触」で自在にデザイン:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
村田製作所の子会社であるミライセンスは、ゲーム機やVR(仮想現実)/AR(拡張現実)デバイス向けコンテンツに求められる触力覚(ハプティクス)を直感的にデザインできるハプティクス生成ミドルウェア「PulsarSDK」を開発した。
広帯域型アクチュエータの量産投入が背景に
PulsarSDKの投入の背景には、触力覚を実現する上で重要な役割を果たす広帯域型アクチュエータの量産投入を複数の部品メーカーが準備している事実がある。香田氏は「従来のアクチュエータは1つの共振周波数のみを用いる1周波数型だったが、任意波形で幅広い周波数帯を用いる広帯域型が登場している。これをオーディオで例えれば、ブザーだけだったところにスピーカーが登場したようなものだ」と説明する。
ただし、広帯域型アクチュエータの的確な制御と望むような触力覚の実現は煩雑かつ複雑であり、高度なノウハウが必要になる。PulsarSDKは、ミライセンスがハードウェア開発からツールまでをカバーする事業展開の中で培ってきた技術やノウハウによって、広帯域型アクチュエータの制御を大幅に簡略化し、ゲームコンテンツに用いる触力覚の開発に集中できるようにした。「画像であればPhotoshop、音楽であればPremiereと同じで、触力覚の制作ツールとして展開したい」(香田氏)という。
PulsarSDKは、コンテンツ開発に必要な機能として、楽曲や効果音からの感触の自動生成や、AI(人工知能)を応用した直感的な触感生成などを用意。力覚波形を応用して手応え感を自在に設計できる波形編集ツールや、画像を読み込むだけで材質感を自動生成する表面材質感編集ツールなどもある。
PulsarSDKがまずターゲットに置いているのは、間もなく市場投入される「PS5」や「Xbox Series X」などの次世代ゲーム機向けのコンテンツ開発だ。これらの次世代ゲーム機はコントローラーに新たな触覚フィードバック機能を搭載しており、PulsarSDKはそのために必要な触力覚の設計に最適なツールとして提案する。多くのゲームソフト会社が採用するUnreal Engine対応版から投入するのはこのためだ。続いて独自のゲームエンジンを持つゲーム会社向けとなるスタンドアロン版のβテストを2021年から始め、同年夏ごろには正式リリースする予定である。
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