「こて」型装置が腕の負担を軽減、産業用パワーアシストスーツが実地試験:ロボット開発ニュース
ATOUNは2020年10月6日、積み込みや運搬作業時に作業者の腕と腰部分の負担を軽減する「ATOUN MODEL Y + kote」の実地試験を開始した。「こて」のような形状の装置が装着者の負担を減らす。協力会社である鈴与の物流センターで試験を実施する。結果に問題が無ければ、2021年内に同製品を販売する予定。
ATOUN(アトウン)は2020年10月6日、荷物の積み替えや運搬作業時に作業者の腰部分をサポートする「ATOUN MODEL Y(以下、MODEL Y)」に、腕部分のサポート装置を追加した「ATOUN MODEL Y + kote(以下、MODEL Y + kote)」の実地試験を開始したことを発表した。総合物流事業を展開する鈴与が試験に協力し、同社の物流センターで実施する。試験結果に問題が無ければ、2021年内にMODEL Y + koteを販売する予定だ。
MODEL Yは作業者の腰部分をサポートするパワーアシストスーツである。スーツ装着者が荷物を持ち上げた際の重量負荷を10kg程度軽減する(アシスト力)。空港での航空コンテナへの荷物の移し替えや、工場での原材料の投入作業、建設現場での鋼材の運搬作業などで導入事例がある。2018年の発売以来、累計販売台数は700台を超えた。
今回、実地試験を行うMODEL Y + koteは、「こて」のような装置を手に装着することで、腰部分だけでなく手や腕部分のアシストも可能にするというものだ。腰部分の装置と「こて」部分を合計した装置重量は約5.9kg。「こて」部分のみのアシスト力は片腕で6kg、両腕では12kgである。バッテリーの稼働時間は約2.5時間で、防塵/防滴に関する規格であるIP44も取得済みだ。制御系は左右で分離されており、荷物の持ち方が左右で異なる場合でも問題なく運搬、持ち上げ作業が可能となる。
ATOUN 技術開発部 次長の中野基輝氏は「腕部分の負担軽減を実現する装置については、以前からニーズがあることは把握していた。こうした装置を技術的に実現する手法はさまざまなものがある。ただ、着用者の作業を妨げない設計をしなければならない点が制約となる」と語った。
そこでATOUNは、ワイヤ方式を採用することでMODEL Y + koteの実現を目指した。手のひらに作業者の握力を検出するセンサーを搭載し、その強さに応じて肩付近のモーターが着用者の体幹方向に向かってワイヤを巻き上げる仕組みだ。ゴムやサポーターを用いた方式と異なり、作業者の動作を妨げない。
実地試験では、25kgのパレットを高所から低所に積み替える作業を行う。積み替えの対象となるパレットは、長尺のものや金属製のものなどさまざまな種類がある。これらの荷さばきが問題なく行えるかを試験するとともに、作業負荷がどの程度軽減され、業務効率が向上するかも確認する。試験期間は2カ月程度を予定。鈴与の大井物流センター(東京都大田区)で試験を始め、その後、別の拠点でも試験を行うという。
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