軽量かつ低消費電力のアシストスーツ、NEDOが信州大学と共同開発:ロボット開発ニュース
NEDOと信州大学はPVCゲルアクチュエーターを搭載した腰サポートウェアを共同開発した。重量が2kg程度と軽量で電力消費が少ない。研究開発を進め2021年までの製品化を目指す。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と信州大学は2020年1月14日、ポリ塩化ビニール(PVC)ゲルアクチュエーターを搭載した腰サポートウェアを共同開発したと発表した。開発した腰サポートウェアは、重量が2kg程度と軽量で低消費電力であることを特徴としている。PVCゲルアクチュエーター自体が弾力的に変形しやすいため、装着時の拘束感が少なく、装着者へのストレスも少ない。今後、さらなる軽量化や高出力化、安全性の確保のための研究開発を行い、2021年までの製品化を目指す。
今回開発した腰サポートウェアに採用したPVCゲルアクチュエーターは、これまで腰サポートウェアのアクチュエーターとして検討されてきた誘電エラストマーアクチュエーターと比較して、同程度の膜厚で10分の1以下の電圧で駆動させられる。また、今回使用しているPVCゲルアクチュエーターは陽極として金属メッシュを用いており、PVCゲルがメッシュの空隙に入り込む挙動を利用することで、膜厚方向に10%以上収縮する。
開発した腰サポートウェアは、積層したPVCゲルアクチュエーターを直径約6cm、長さ約45cmの筐体に格納し、本体に取り付けられた上肢と下肢のハーネスを、肩と大腿部にそれぞれ装着して使用する。アクチュエーターの駆動に伴い、アクチュエーター下部に接続されている下肢ハーネスを引き上げることで上肢と下肢間に引張力が発生し、能動的に腰の負担を軽減することができる。また、全体の重量は2kgと軽量で低消費電力である。加えて、PVCゲルアクチュエーター自体が弾力的に変形しやすいため、人の動作も拘束しにくい。
介護や物流現場などの作業を支援するアシストスーツの動力源としてはモーターが用いられていることが多い。しかし、重い、硬い、駆動音が大きい、拘束感が強いなどの課題が指摘されている。モーターに替わるアクチュエーターとして、電場を加えることで数百%という大きなひずみを示す誘電エラストマーアクチュエーターが検討されてきたが、エネルギー効率が高い一方で駆動電圧に数千Vの高電圧が必要だった。PVCゲルアクチュエーターは、その10分の1以下の低い電圧で駆動できるため、柔軟、軽量、静音など人との親和性が高いアシストスーツの開発につなげられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「一家に一台、マッスルスーツ」、イノフィスが10万円台のパワードスーツを発売
イノフィスは2019年9月24日、パワードスーツの新製品「マッスルスーツ Every」を同年11月1日から発売すると発表した。 - パワーアシストスーツの市場形成へ、現場の働き方改革を訴えるATOUNの挑戦
パワーアシストスーツを展開するATOUN。「パワーアシストスーツが現場にあって当たり前のものとする」と語るATOUN 代表取締役社長 藤本弘道氏に現状の手応えと今後のパワーアシストスーツの普及への考えについて聞いた。 - バーベル調整負荷を低減、東京パラ競技にパワーアシストスーツが登場
パナソニックは2019年9月26日、「世界パラ・パワーリフティング(WPPO)競技大会」にATOUN製のパワーアシストスーツを提供すると発表した。同製品は競技補助者が着用し、ウエイト交換などの作業負担を軽減する。 - 荷物を下ろすことに着目、ATOUNのパワーアシストスーツは“パワードウェア”へ
ATOUNは「人手不足対策展 2018」において、腰用パワーアシストスーツの新モデル「ATOUN MODEL Y」を披露した。2015年秋に発売した「ATOUN MODEL A」と比べて大幅な軽量化やコスト削減、機能向上を実現したことが特徴。2018年7月から出荷を始める。 - 東京オリパラでロボット導入、トヨタは車いすサポート、パナソニックは腰を守る
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は2019年3月15日、大会ビジョンである「史上最もイノベーティブで世界にポジティブな改革をもたらす大会」に向けた取り組みとして、ロボットプロジェクトを発表した。第1弾として、車いす席の観戦をサポートするトヨタ自動車の「HSR」「DSR」と、重量物を運ぶ運営作業スタッフの負担を軽減するパナソニック子会社ATOUNのパワーアシストスーツ「ATOUN MODEL Y」を会場で導入することを明らかにした。 - 油圧ならトン単位の力も出せる、ブリヂストンのゴム人工筋肉
ブリヂストンは、「Japan Robot Week 2018」において、アシストスーツや歩行トレーニング装置などに最適な空気圧式ゴム人工筋肉を展示した。