パワーアシストスーツの市場形成へ、現場の働き方改革を訴えるATOUNの挑戦:FAインタビュー(1/2 ページ)
パワーアシストスーツを展開するATOUN。「パワーアシストスーツが現場にあって当たり前のものとする」と語るATOUN 代表取締役社長 藤本弘道氏に現状の手応えと今後のパワーアシストスーツの普及への考えについて聞いた。
ロボットやAI(人工知能)などが目覚ましい発展を遂げている一方で、さまざまな“現場”では、人手による“力仕事”が多く残されているのが現実である。人口減少などによる労働者不足などが深刻化する中で、ロボットや専門装置による自動化や自律化は今後さらに広がる見込みだが、人手による柔軟性や汎用性、コストパフォーマンスに比べると利用できる領域は、しばらくは限定されたものになる。
そこでこの“残された人手による力仕事”を直接支援するパワーアシストスーツに大きな注目が集まっている。パワーアシストスーツはモーターやゴム、ばねなどを使い、人の作業を補助する補助器具である。
2003年にパナソニックの社内ベンチャー制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」により設立され、2017年4月に旧社名アクティブリンクから社名変更をしたATOUN(以下アトウン)は、モーターを活用した「アクティブ型」のパワーアシストスーツを中心とし“パワードウェア”として提案を進めている。2018年7月に発売した腰用パワードウェア「ATOUN MODEL Y」を航空機向けの地上サービスであるJALグランドサービスなどさまざまな企業に導入し、共同実証などに取り組んでいる。
「パワーアシストスーツが現場にあって当たり前のものとする」と語るATOUN 代表取締役社長 藤本弘道氏に現状の手応えと今後のパワーアシストスーツの普及への考えについて聞いた。
2019年10月時点で550台を導入
―― 2018年に発売した「ATOUN MODEL Y」の手応えを教えてください。
藤本氏 「ATOUN MODEL Y」は人手作業における腰の負担を軽減することに特化したモデルだ。持ち上げや持ち下げ動作の負担を軽減し、実証を通じて作業効率を約2割程度改善することなども確認できている。2018年7月に発売後、物流や倉庫、製造現場などを中心に導入が広がってきている。繰り返し作業や一定の姿勢保持が必要な領域で使われている。
2019年10月時点で累計550台以上の販売となっている。受注では600台を超えた。今までは先進ユーザーがプロトタイプで試してみるという時期が長くあったが、いよいよ本格的に導入して活用する流れに入りつつある手応えを感じている。
経済合理性よりも「未来の働き方」
―― 約2割の作業改善で経済合理性を持って導入できる場所にはどういうところがあるのでしょうか。
藤本氏 現状「ATOUN MODEL Y」は70〜80万円前後で販売されているケースが多いが、毎日繰り返して6〜7時間使うことを考えれば十分に費用対効果に見合うともいえる。ただ、現在導入を進めてくれている先導ユーザーの多くはこうした費用対効果よりも「将来の働き方」を考えて導入してくれているケースがほとんどだ。
将来的に人手不足がさらに深刻化することが確実視される中で、物流や製造などの現場では、現状の働き方をそのまま続けるわけにはいかない。ロボットなどで自動化が進められるところはそれらを活用すればよいが、それが難しい現場は人に頼らざるを得ない。そのために少しでも人の作業の負担を軽減し、作業効率を上げるということが必要になる。先導ユーザーでは、これらに対して、先行的にノウハウの蓄積や活用方法の開拓などを進めるために導入している。
われわれはこうして先行的に導入してくれたユーザーに対して、しっかり期待に応えていかなければならないと考えている。リスクのある中で応援してもらった恩を忘れずに、フィードバックを得たより良い製品が開発できた際には、新製品にバージョンアップできるようなパートナー型のビジネスモデルを展開していくようにしたい。
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