パワーアシストスーツの市場形成へ、現場の働き方改革を訴えるATOUNの挑戦:FAインタビュー(2/2 ページ)
パワーアシストスーツを展開するATOUN。「パワーアシストスーツが現場にあって当たり前のものとする」と語るATOUN 代表取締役社長 藤本弘道氏に現状の手応えと今後のパワーアシストスーツの普及への考えについて聞いた。
2022年に普及価格帯を投入
―― 現状では先導的なユーザーが中心だということですが、経済合理性を求めるユーザーに対してはどういう取り組みを進めていくつもりですか。
藤本氏 現状は先導ユーザーへの導入が進んできたフェーズで経済合理性を求めるユーザーに導入が広がるのは2022年頃からだと考えている。その時期を目標に普及価格帯モデルの開発を進めている。「ATOUN MODEL Y」は2019年5月に「腕補助用追加ユニット」をリリースしたが、普及価格帯モデルでは腕補助用ユニットが付いた状態で現状の「ATOUN MODEL Y」の価格よりも安いところを目指すつもりだ。そのためにはどの機能が必要で、どの部分が削れるかを実証を通じて検証している。
最終的には小さな町工場でも使ってもらえるような環境を作りたい。町工場などでは人手不足や生産性改善などがより深刻であり、パワードウェアを改善の1つのきっかけとしてもらえるように機能の開発や販売体制の構築などに取り組む。ユニフォームのように「あって当たり前の道具」として認めてもらえるようにしていく。
データ活用を視野に、通信機能搭載も想定
―― 価格だけを考えれば、動力を使わないゴムやばね、ワイヤを使うものなども考えられますが、そのあたりはどう考えているのでしょうか。
藤本氏 ゴムやばねなどを使うものは現在でも3万円前後から市場に存在している。ただ、ゴムやばねは動かない作業を支持するのには最適だが、さまざまな作業を行う際には作業の邪魔をすることになる。さまざまな動作をよりよく支援することを考えると中心は動力があるアクティブタイプだと考えている。動力のないパッシブタイプも展開はするがあくまでもサブ的なサポートで使うつもりだ。この違いが“価格だけ”を求めるユーザーとのすみ分けにつながっているようにも感じている。将来のより良い働き方を求めるという点がATOUNの特徴だ。
また、アクティブタイプのメリットとして、作業や動作の記録をデータとして取得できる点がある。現状ではデータの利活用はまだ行っていないが、個々の機種のログなどは取得しようと思えばできる状況にある。また将来的には、通信機能を搭載することも考えており、現行モデルでも設計上は通信機能を搭載できるスペースを用意している。
海外展開も本格化
―― 海外展開についてはどう考えていますか。
藤本氏 2019年度から海外でも展示会などを通じて紹介を開始したところだ。本格的には2020年度から展開を開始する。シンガポールや台湾などを中心に進めていくつもりだ。
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