ジェイテクトの新たな「FA」事業は“ヒューマンドリブン”で価値を生み出す:製造業がサービス業となる日(1/3 ページ)
ジェイテクトが新規事業として立ち上げたのが製造業マッチングサービス「ファクトリーエージェント(FA)」だ。2020年4月1日から同事業は「株式会社ジェイテクトFA」として分離独立することになる。競合となる他社の製造業向け受発注プラットフォームと比べてどのような違いがあるのだろうか。
ジェイテクトは、世界シェアトップの電動パワーステアリング(EPS)をはじめ、さまざまな機械や装置に用いられる軸受、研削盤を中核とする工作機械などを手掛けるメーカーとして知られている。これらの製品は自動車業界との関わりが大きく、その市場動向の影響も受けやすい。特に、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)の影響によって自動車業界は100年に1度の大変革期に入っており、ジェイテクトもそのためにさまざまな施策を展開している。
それらの施策の中でも注力しているのが新規事業の開発だ。社長直轄の新規事業部の下で、パワーアシストスーツ「J-PAS」や介護用歩行器「J-Walker テクテック」、水管理ソリューション「J-WeLL」、高耐熱リチウムイオンキャパシターなどの立ち上げを進めており、高耐熱リチウムイオンキャパシターについては既に新工場も建設している。
これらの新規事業の中で異彩を放っているのが、製造業マッチングサービス「ファクトリーエージェント(FA)」である。J-PAS、J-Walker、J-WeLL、高耐熱リチウムイオンキャパシターとも、ジェイテクトが製造業であることから「モノ」が中心に事業になっている。これに対してファクトリーエージェントは、モノを作ってほしいサービス利用者と、モノを作ることを得意とする町工場との間をつなげるサービスであり「コト」を提供するものだ。
ジェイテクトは2020年2月28日、このファクトリーエージェントに関わる事業を会社分割し、同年4月1日付で「株式会社ジェイテクトFA」として独立させることを発表した。このジェイテクトFAの代表取締役社長に就任する、ジェイテクト 新規事業推進部 第3推進室 主担当の上出武史氏に、ファクトリーエージェント立ち上げの背景やサービス内容、競合サービスとの違いについて聞いた。
カスタマイズ性の強い部品を求めるオーダーメイド需要が急拡大
ファクトリーエージェントは、Webサイトを用いた製造業マッチングサービスである。利用者がWebサイト上で加工したいモノの図面や要件を登録すると、その加工が可能な企業を受注候補としてリスト化する。利用者がそのリストの中から見積もりなどを比較してオンライン上で発注すると後日納品される仕組みだ。
上出氏は「製造業が図面加工品を外部調達する市場が拡大を続けている。特に、カスタマイズ性の強い部品を求めるオーダーメイドの需要の伸びが著しい」と語る。このトレンドは、日本の製造業が直面する高齢化や人手不足、それに伴う技術承継の機会損失とも無関係ではない。ティア3〜ティア4の町工場の廃業も進んでおり、そこで作られていた部品の調達や代替に大手製造業も悩まされている。「10年ほど前から続いている流れだが、問題として一気に顕在化しつつある。そこでジェイテクトとして、日本を支えてきた町工場を中心とする製造業のサプライチェーンに向けて貢献できるのではないかと考え、ファクトリーエージェントを立ち上げることにした」(同氏)という。
ジェイテクトは、前身である豊田工機と光洋精工の歴史に裏付けられた金属加工を中心とする技術力があり、EPSなどのトップシェア製品を持つ自動車部品メーカーとしての部品供給を受ける町工場との間のネットワークや影響力もある。これらを基盤として、ITやマーケティング分野で豊富な経験を持つ中途人材を活用することで、ファクトリーエージェントは新規事業として発足した。上出氏自身も、ジェイテクト入社以前は半導体メーカーのWebマーケティングやセールスマネージャーを担当していたキャリアを持つ。
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