ソフトバンクが外食産業向け配膳・下げ膳用ロボット事業に参入:サービスロボット
ソフトバンクロボティクスグループとBear Roboticsは2020年9月28日、配膳・運搬ロボット「Servi(サービィ)」を2021年1月に発売すると発表した。
ソフトバンクロボティクスグループとBear Roboticsは2020年9月28日、配膳・運搬ロボット「Servi(サービィ)」を2021年1月に発売すると発表した。
簡単な操作で配膳や運搬が行える自律移動ロボット
「サービィ」は飲食店やホテル、旅館などにおいて、主にキッチンからテーブルへの料理の配膳と下げ膳を支援する自律移動型のロボットである。従業員と共に働くことを想定しており、簡単な操作で配膳や運搬が行える。
「サービィ」はもともと米国シリコンバレーのベンチャー企業Bear Roboticsが開発したものだ。同社のCEOであるJohn Ha(ジョン・ハ)氏がレストランオーナーであり自店での効率化のためにロボットを使うことを想定して開発したという。そのため、飲食店での実用性を重視しているということが特徴だ。人や物を円滑に回避できる他、狭い通路での通行を可能とする。最大積載重量は約35kgとなっており、重量センサーで皿やグラスを検知し、上下3段に分けて料理を運搬する。また、行先とGOボタンの2タップで操作が行える。
センサーには3Dカメラ3つとLiDARセンサー1つを搭載。本体は約486×462×1051mmのサイズで60cmの道幅で走行可能だとしている。4cm以上の障害物を検知可能で、LiDARセンサーと3Dカメラを組み合わせて障害物検知を行う。段差検知については3Dカメラで行っている。ナビゲーション方式はSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を採用し、マーカーなしに約3時間の設定で設置可能だとしている。
レストラン環境に溶け込むロボット
既に10社以上で実証実験を進めており、半年で合計3000kmの走行距離の稼働実績があるがその中でも「安定稼働させることができている」(ソフトバンクロボティクス 常務執行役員 兼 CBOの坂田大氏)。
実証実験の結果としてもさまざまな結果が得られているという。飲食店では人材不足が深刻化しており、人の作業負担軽減が大きなテーマとなっている。実証実験では、「サービィ」を活用することにより、スタッフが配膳や下げ膳にかける時間を削減でき、接客にかける時間を2倍に向上することに成功したという。
加えて、下げ膳が効率的に行えるようになったことで、ピーク時に複数テーブルを効率的に下げ膳できるようになることで、座席回転率を21%向上させることができた。また、労働時間についても1日で9時間分の作業効率化ができたとしている。来店者の満足度も比較的高くアンケートについては「95%の満足度が得られた。また従業員満足度も高い結果が得られた」(坂田氏)。
「サービィ」の発売は2021年1月からで、2020年10月からは無料体験会を行う。料金は3年プランで月額9万9800円(税別)。故障の無償保証や翌日の交換品の配送、定期メンテナンスなどはセットで組み込んでいるという。
サービスロボットへの参入企業は最近増えており、配膳や下げ膳に関する製品も増えているが、差別化のポイントについて坂田氏は「技術的にはさまざまなポイントがあるが、多くのPoC(概念実証)を行ってきて、最も評価された点は『レストランに溶け込む』ということだった。オペレーションへの組み込みやすさやデザインとしての良さなどを含めて、実用的だと評価された点が強みだと考えている」と述べている。
また、ソフトバンクロボティクスではさまざまなロボット領域への展開拡大を進めているが「さまざまな方向性での模索は進めているが現状では詳しいことは言えない。ただ、基本的な考え方として『実用に耐え得る技術』『ニーズがある技術』という2つの視点で、実現性を見据えて順番に現実化していく」と、ソフトバンクロボティクス 代表取締役社長 兼 CEOの富澤文秀氏はロボット事業の展望について語っている。
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