ニュース
宇宙滞在により加齢が加速、変化を食い止める転写因子も明らかに:医療技術ニュース
東北大学は、遺伝子ノックアウトマウスの宇宙滞在生存帰還実験から、宇宙長期滞在により加齢変化が加速すること、転写因子が加齢変化を食い止める働きをすることを明らかにした。
東北大学は2020年9月9日、遺伝子ノックアウトマウスの宇宙滞在生存帰還実験に成功したと発表した。宇宙での長期滞在によって加齢変化が加速すること、転写因子Nrf2が宇宙環境のストレスによる加齢変化の加速を食い止める働きをすることを明らかにした。宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究による成果だ。
研究グループは、生体防御遺伝子群を活性化し、地上でのさまざまなストレスに対して保護的に働くNrf2に着目。国際宇宙ステーション(ISS)において、Nrf2遺伝子ノックアウトマウスの長期滞在実験を実施した。
野生型およびNrf2遺伝子ノックアウトマウス各6匹をISS「きぼう」日本実験棟で約30日間飼育した後、12匹全てを地上に帰還させた。帰還後のマウスを調べたところ、宇宙滞在マウスでは、さまざまな臓器でNrf2が活性化していた。また、遺伝子発現、血中代謝物、白色脂肪サイズの変化が確認され、その一部は人の加齢性変化と同じであった。さらに、宇宙滞在による加齢変化は、Nrf2遺伝子ノックアウトマウスで加速していた。
関連記事
- 宇宙の無重力空間で委縮した胸腺は、人工重力で軽減することを解明
理化学研究所は、無重力空間を経験すると胸腺が委縮すること、その委縮は人工的な重力負荷で軽減すること、委縮が胸腺細胞の増殖抑制によって起こるという仕組みを発見した。 - 長期宇宙滞在で発生する眼球の変形、原因が大脳の移動だと明らかに
京都大学が、長期宇宙滞在後の宇宙飛行士に見られる、眼球の後ろが平たくなる眼球後部平たん化と、眼球とつながる視神経を取り囲む視神経鞘の拡大について、その本質的な病因を明らかにした。 - 無重力で発現が急上昇する骨関連遺伝子を発見、メダカの連続撮影で明らかに
東京工業大学は、国際宇宙ステーション「きぼう」でメダカを8日間連続で撮影し、骨芽細胞マーカーなどの骨関連遺伝子と、その他の5つの遺伝子の発現が無重力下で急上昇することを明らかにした。 - ヒト脳の老化進行を評価する新しい加齢バイオマーカーを発見
理化学研究所は、磁気共鳴画像法の新しい手法を用いて、ヒトの脳の静脈排出パターンが加齢とともに変化することを発見し、加齢や脳損傷に伴う静脈排出不全が脳室の拡大を引き起こすメカニズムを示した。 - ヒトの認知機能をつかさどる脳内情報表現の可視化に成功
情報通信研究機構は、ヒトの認知機能と脳活動の関係を説明する情報表現モデルを構築し、脳内情報表現を可視化することに成功した。今後、学習や加齢による認知機能の脳内表現の変化や、個人の能力を定量的に可視化するなどの応用が期待される。 - 体内時計の働きが記憶を思い出させる、そのメカニズムを解明
東京大学は、記憶を思い出すには体内時計の働きが必要であることと、体内時計がドーパミンを活性化することで記憶を想起させる分子メカニズムを解明した。この成果を応用することで、加齢に伴う想起障害の改善や認知症の症状緩和が期待できる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.