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品質やコストにも関わる物流、トヨタは東海地方のミルクランで大変革いまさら聞けない自動車業界用語(5)(2/2 ページ)

知っておきたい自動車業界用語、今回は「物流」です。できた物を運ぶだけじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、製品の品質確保、コスト削減や環境負荷低減にもつながる非常に重要な仕事です。実際にどのような業務が行われ、今後どのように変わっていくのか。用語の解説も併せて覚え、ぜひとも実務に活用してください。

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ジャストインタイムに関わる多回/混載化

 さてこうして納入される製品ですが、JIT(ジャストインタイム/必要なものを必要な時にだけ納入する)が徹底されたトヨタでは物流の改善が行われ続けています。納入便の多回/混載化が良い例です。多回とは「1日に複数回納入すること」です。例えば、1日に1000個製品を使用する場合、1日1回の納入だと1000個一度に納入する必要があり、最低でも1日分の在庫、それを保管するスペースを持たないといけません。しかし、1日に2回納入になれば1回の納入は500個で済み、在庫や保管スペースも半減させることができます。

 ただ、多回納入するとトラックの積載量が下がってしまいます。その問題を解決するのが混載化です。他のサプライヤーや工場、受入と合わせて出荷することでトラックの積載量を上げ、効率的な運搬が可能になります。ただし、積載率が上がると、部品の納入数量が変動した場合に対応できず、トラックに乗り切らないということが起こり得ます。そのため、多回/混載化を行うためには発注の平準化が求められます。


ジャストインタイムに不可欠な物流の改善(クリックして拡大)

 遠隔地への物流でも効率化が進められてきました。遠距離になると運搬のリードタイムが長くなり、積載率が低かった場合は費用が増加し、近距離輸送と比べて便の多回化も難しいといった問題が起こります。そのため、遠距離の場合、部品メーカーには中継地に製品を納入してもらい、それらを完成車メーカーがまとめて運搬する方法が採用されています。この方法により遠隔地でも積載率を向上させ、多回での納入が可能になりました。

 また、地球に優しく大量輸送が可能な鉄道による部品輸送への転換(モーダルシフト)も実施されています。今回はトヨタでの調達物流に焦点を当てましたが、他の完成車メーカーでも同様の改善を行い、コスト削減や環境に優しい物流改善に取り組んでいます。

トヨタが物流の主体となる「ミルクラン」がスタート

 進歩を続けてきたトヨタの調達物流ですが、2020年に大きく変わろうとしています。2019年12月、トヨタは東海地方で「ミルクラン」を開始すると発表しました。スタートは2020年9月です。

 「ミルクラン」は日本語では巡回集荷と言い、製造業者(完成車メーカー)が決められたルートに従って集荷を行うことです。すなわち、トヨタの手配による「引き取り物流」に変更となります。トヨタが部品の供給網全体の物流を手配することで効率化が図られ、納入されるリードタイムも短縮される見通しです。ただ、サプライヤーからすると、これまでコントロールできていた物流ルートやコストがトヨタに握られてしまうことも意味しています。

 物流の手配はこれまでサプライヤーが行うのが原則で、サプライヤーの拠点が愛知県豊田市近郊に集約される要因になっていました。東北や九州では東海地方に先駆けてミルクランが開始されていましたが、トヨタのお膝元である東海地方で始まることは大きな変革です。

 物流業界ではドライバーの不足がしており、「ホワイト物流」(輸送生産性の向上/物流効率化・女性や60代も働きやすい労働環境実現)が推進されています。負荷低減にもつながるミルクランへの変更は、環境規制が強化される中で時代の流れとしても避けられないものかもしれません。物流業者の選択などさまざまな課題もありますが、トヨタはミルクラン化を進め、拡大していく見込みです。現在開発が進められている燃料電池トラックなど次世代技術を取り入れた運搬も採用されていくでしょう。

 物流は、単に物を運ぶだけではない非常に奥深い業務です。輸送方法や荷姿、ルートなどさまざまな業務プロセスがあり、それぞれに改善の余地があります。BCP(事業継続計画)など災害に備えた対応も必要ですし、物流そのものが製品の品質を保つ工程であり、サプライヤー選定の要因にもなります。専門用語が多数出てきましたが、これらをぜひとも実務で活用していただけたらと思います。

(次回へ続く)

→その他の「いまさら聞けない自動車業界用語」はこちら

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