新生umatiの進む道――工場内のあらゆる機械装置の共通インタフェースへ:いまさら聞けないumati入門(4)(5/5 ページ)
工作機械の共通インタフェースとして注目を集める「umati」について紹介してきた本連載だが、今回はこの「umati」についての大きな変化があったため、その内容について解説したい。
umatiの課題と今後
以上のように対象と体制が変わり「新しいumati」としての活動が既に始まっている。これからさらに関係する機械メーカーおよびユーザーが増えていくと予想される中で、役割の明確化によって一層の推進が見込まれることだろう。だがその半面、課題も存在する。
1つ目の課題は、工作機械をはじめとする機械装置の共通インタフェースとして「本当にumatiは浸透するのか」という点である。実はumatiよりも先行して進んでいるのが、米国の工作機械工業会であるAMTが推進するMTConnectだ。2006年から規格化が始められたMTConnectは、OPC UAをベースとして利用できるようにとOPC Foundation内で議論が進み、2018年11月には既に最初のドラフト版のレビューが開始されている。その後改定を重ねて、2019年6月にCompanion Specification for MTConnectとして既に正式リリースまで至っているのだ(図15)。
以前の記事でも触れたが工作機械の共通インタフェースとしてumatiとMTConnectの2つが並行しており、統合化の道筋はまだ見えていない。2つの規格に適応を余儀なくされているユーザーのことを考えると、将来的に統合へ向けた模索は避けられないであろう。
もう1つの課題は「本当にumatiはユーザーにメリットを提供できるのか」という点である。umatiの規格に沿った工作機械が工場に並べば、確かに効率良く機械からの情報取得は可能となるだろう。しかし、umatiの規格で定義された情報を用いてユーザーが工場の生産性を本当に向上させることができるのだろうか。あるいは、umatiに対応した最新の工作機械とumatiに対応ができない既設の工作機械とが共に並ぶ工場でも、生産性の向上は見込めるのだろうか。これらの点についてはさらなる検討が必要とされており、そういう意味でまだまだ課題は残されている。
この点では、規格策定が先行する射出成形機向けの事例が参考になると考えている。射出成形機向けの規格は幾つかに分かれて定義されており、その中に「OPC40077」という「射出成形機の本機についての規格」と、「OPC40086」という「射出成形機に樹脂材料を供給するサイロ装置についての規格」が存在する。射出成形機とサイロ装置は単体でそれぞれをモニタリングしても稼働状況の監視しかできないが、お互いがMES(生産実行システム)などを介してつながることにより、これまでは自動化が困難であった樹脂供給から射出成形という一連のプロセスの自動化が一気に推進するのではないかという期待が高まっている(図16)。
工作機械向けでも、umatiの活用により生産性の向上に結び付く具体的な道筋が見えてくるのかどうかが重要なポイントとなるだろう。課題を解決して規格の普及は進むのか。これからのumatiの動向に注目だ。
著者紹介:
高口順一(こうぐち じゅんいち)
ベッコフオートメーション ソリューション・アプリケーション・エンジニア
東京大学工学部を卒業後、ものづくりコンサルティングファームに入社。2005年には「金型生産工程の超短納期化の実現」にて第1回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞を受賞。その後、工作機械メーカーを経て、2015年にPC制御に特化したドイツの制御装置メーカーであるベッコフオートメーション株式会社に入社。ソフトウェアPLC/CNCであるTwinCATの技術を担当しその普及に努めている。
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