視認性の低い領域だけを鮮やかに補正、車載カメラ向け画像処理技術を新開発:車載ソフトウェア
マクセルは2020年8月17日、車載カメラの映像に高視認化処理と色復元処理を高速で施す、高演色・高速画像処理アルゴリズムを開発したと発表した。映像内の暗く不鮮明な領域だけを高速で補正できる。映像内に映る歩行者などの視認性を向上することで、安全運転支援サービスなどの開発にもつながる。
マクセルは2020年8月17日、車載カメラなどで撮影した映像に高視認化処理と色復元処理を高速で施す、高演色・高速画像処理アルゴリズムを開発したと発表した。映像内の暗く不鮮明な領域のみを明るく色鮮やかに補正して、歩行者や運転標識などの視認性を向上することで、安全運転を支援するシステム開発に役立てる。
映像の明るさを調整する技術としては、以前からコントラスト補正や明るさ補正などが存在した。しかし、これらの技術は映像内の特定の領域だけではなく、映像全体を補正してしまう。このため、元から明るい部分の色が薄くなり、かえって視認性が低下するなどの問題があった。
この問題を解決するのが、今回マクセルが開発した高演色・高速画像処理アルゴリズムである。映像の領域ごとの特徴を認識し、それに応じた適切な画像補正を施せる。例えば、夜間に撮影した映像などで物体の色が認識しづらい場合は、色成分を復元することで(高演色化)物体を見やすくできる。これによって雨天時や撮影場所周辺に霧が出ている環境下で撮影した映像でも、高い視認性が保てる。
また、FPGAやASICなどのハードウェアにアルゴリズムを実装することで、演算時の処理遅延を大幅に低減できる。ハードウェア実装時には60fpsの映像をリアルタイム処理できるようになる。原理的には120fps以上の高速カメラ映像にも対応可能だという。
マクセルは、今回開発したアルゴリズムを、同社が開発を進める「車載映像表示システム」のコア技術と位置付けている。今後は、アルゴリズムを車載カメラの映像に適用した上で、AR(拡張現実)対応のHUD(ヘッドアップディスプレイ)に表示して、ドライバーの安全運転支援を行うシステムを開発する予定。システムの市場投入は2021年以降になる見通しだ。
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