自動運転技術の研究開発での課題は? 読者調査で聞いた:MONOist読者調査(2/2 ページ)
MONOistはメールマガジン読者を対象に「自動運転シミュレーションについてのアンケート」を実施。自動運転技術の研究開発の進捗度や競合他社と比べたポジショニングをどう捉えているか、開発体制の課題、ボトルネックとなっている技術領域などについて調査した。
質の面での人材不足が課題に
自動運転技術の研究開発について、ボトルネックになっている領域を聞いた。多かったのは「物体や周辺環境の認識技術」(36.3%)や「車両や歩行者、自転車などの動き方を予測する技術」(36.3%)、「AI関連技術」(36.1%)だった。また、「車車間、路車間、歩車間通信技術」(18.8%)や「クラウドやセキュリティなどIT基盤」(18.8%)、「インフォテインメント向け通信技術(ネットワーク、無線通信技術)」(17.8%)などコネクテッド技術も一定数の回答が集まった。このほか、「GPSやSLAMなど自車位置特定技術」(15.2%)や「ドライバーモニタリング技術」(14.7%)なども挙がった。機能安全への対応に言及した回答者もいた。
自動運転技術の開発体制における課題を尋ねた。最も多かったのは「質の面での人材不足」で51.3%に上った。「国際標準や法制度への対応」が40.8%、「資金力不足」が35.1%、「量の面での人材不足」が34.6%、「有力なパートナーやアライアンス先の不足」が27.7%、「開発方針や計画の不足」が26.2%、「開発環境やツールの不足」が23.0%となった。また、実験のための環境や時間、実証走行の環境なども挙がった。
ボトルネックの解消に向けた取り組みを聞くと、「パートナーシップやアライアンスの拡大」(37.7%)や「人材採用」(34.6%)、「配置転換など開発体制の改革」(26.7%)、「ITなど新たな開発ツールの導入」(22.5%)などに回答が集まった。
シミュレーション技術は有効だが導入予定なし?
シミュレーションなどデジタル技術の活用への期待も高い。回答者の94.8%が、ボトルネックとなっている技術領域や開発体制の課題解決においてシミュレーションなどデジタル技術は有効だと答えた。
その理由を尋ねると、設計段階でトライ&エラーができることや、膨大なシナリオの検証、フロントローディングの推進など開発の効率化を挙げる回答が多かった。また、開発期間の短縮や工数削減、人的リソース不足への対策に加えて、実車テストの補完や代替にも有効だという声があった。一方で、シミュレータの精度や規模、使いこなし、複雑な現実な環境をどうシミュレーションに落とし込むかといった課題も指摘された。
実際にシミュレーションなどデジタル技術を活用している領域としては、「物体や周辺環境の認識技術」(22.4%)、「AI関連技術」(21.8%)、「GPSやSLAMなど自車位置特定技術」(19.0%)が挙げられた。今後シミュレーションを導入する予定の領域としては、自動運転技術の「認知」に関する回答が多く、「AI関連技術」が36.2%、「物体や周辺環境の認識技術」が33.9%、「車両や歩行者、自転車などの動き方を予測する技術」が30.5%となった。
なお、32.2%が実際にシミュレーションなどデジタル技術を活用している領域は「特にない」と回答しており、今後導入する予定の領域が「特にない」という回答も19.5%となった。
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