自動車セキュリティとソフト更新の国際基準が成立、2022年へ対応急務:車載セキュリティ(2/2 ページ)
国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)が2020年6月24日に開催され、自動車のサイバーセキュリティとソフトウェアアップデートに関する国際基準(UN規則)が成立した。車両の型式認可を受ける際に、国際基準を満たす体制であることを示す必要がある。サプライチェーンや製造後の自動車の使用期間の全体像を見た対応が求められており、自動車メーカーだけでなく、サプライヤーの参加や自動車のユーザーの理解も不可欠だ。
ソフトウェアのアップデートでは、車両ごとのソフトウェアバージョンと関連するハードウェアの特定、ソフトウェアの保安基準適合性や運転中の安全性への影響の評価、ユーザーへの通知とアップデートに関する情報の記録、ソフトウェア配信経路におけるセキュリティの確保などが可能な「ソフトウェアアップデート管理システム(SUMS)」が求められる。
車両側では、ソフトウェアアップデートの信頼性や完全性の確保、無効な更新の防止が必要だ。ソフトウェアのバージョンをスキャンツールなど標準的な方法で読み出せることや、OTAで更新が失敗した場合に以前のバージョンに復元したり、安全な状態に戻したりできること、ユーザーがOTAの内容について事前に通知を受けられること、安全運転に影響する場合に更新中に運転できないことなども要件となる。
共同議長や副議長として国際議論をリード
WP29は、自動車の安全や環境に関する基準について、国際調和と認証の相互承認を多国間で審議する唯一の場だ。自動車のサイバーセキュリティとソフトウェアアップデートを含め自動運転に関する会議体では、日本は共同議長または副議長を務め、国際議論をリードしている。
日本では、自動運転システムの保安基準について、走行環境条件内で乗車人員および他の交通の安全を妨げるおそれがないこと、走行環境条件外で作動しないことなどを求める。また、走行環境条件を外れる前に運転操作引き継ぎの警報を発し、運転者に引き継がれるまで安全運行を継続し、運転が引き継がれない場合は安全に停止すること、運転者の状況監視のためのドライバーモニタリングを搭載すること、不正アクセス防止等のためのサイバーセキュリティ確保の方策を講じることなども課す。さらに、自動運転システムの作動状態記録装置の搭載や、自動運転車であることを示すステッカーの貼付なども項目にある。
国土交通省では、自動車の特定改造等に関わる許可制度を2020年秋にも開始する。OTAで自動車のプログラム改変し、性能の変更や機能の追加が大規模かつ容易に行えることを踏まえた制度だ。自動車が保安基準に適合しなくなる恐れのある改造を行おうとする者は、事前に国土交通大臣の許可を受けなければならない。具体的には、駐車支援機能や自動車線変更などが想定されている。
こうした特定改造の許可を受けるには、WP29の国際基準と同様にサイバーセキュリティとソフトウェアアップデートの管理システムを持つこと、ソフトウェアアップデートに起因する不具合の是正を的確に実施できる体制、アップデート後の自動車の保安基準適合性の確保が求められる。
自動車の「セーフティ」は、点検整備や車検によって維持することができた。しかし、セキュリティはサイバー攻撃が常に進化することを踏まえて、自動車メーカーが販売後も必要な対策を継続的に講じる必要がある。そのためには、販売後の車両のセキュリティ状態を監視したり、新たな脅威の特定に必要な情報を収集したりしなければならない。自動車ユーザーも、安全に使い続けるために、自動車メーカーが提供するセキュリティパッチなどを確実に車両にインストールする責任が生まれる。
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