新車開発は時間との戦い、サプライヤーも参加する怒涛の試作イベント:いまさら聞けない自動車業界用語(2)(1/4 ページ)
今回は新車開発に関する専門用語を説明します。新車開発は自動車メーカーにおいて極めて重要なプロセスですが、専門用語がたくさんあります。
自動車部品メーカーで働くカッパッパです。
今回は新車開発に関する専門用語を説明します。
新車開発は自動車メーカーにおいて極めて重要なプロセスですが、専門用語がたくさんあります。
自動車メーカーごとに用語が異なっており、部外者は聞いたことのない意味不明な言葉ばかり……それぞれの用語や、開発スケジュールの進み方に加えて、実際に現場でどのように仕事が行われているかについて解説します。
開発から生産準備まで
新車開発は、販売開始の3年ほど前からスタートし、量産まで「開発」「生産準備」のパートに分けることができます。
車両のプラットフォームを企画する場合は、3年以上前から動いていることもあります。例えば、トヨタ自動車の「TNGA(Toyota New Global Architecture)」は、初めて公に発表されたのは2012年のことでした。2015年に全面改良した「プリウス」を皮切りに、車両セグメントごとにプラットフォームが順次立ち上がり、エンジンやTHS、トランスミッションのラインアップも増えていきました。今後さらにTNGAに磨きをかけていくことを考えると、とても息の長い取り組みだといえます。
さて、新車開発は、自動車メーカーがクルマのコンセプトを検討し、どんな新型車をつくるか企画する段階です。既存のクルマのモデルチェンジであったり、全く新しい車種であったり、その形式はさまざまです。
開発の前には「研究」の段階があり、自動車メーカーやサプライヤーは5〜10年後を見越した先行開発を行っています。最近では、自動運転システムや運転支援の在り方を検討するために自動車メーカーが半導体メーカーと直接話し合うケースも増えています。半導体を詳しく研究することで、将来の競争力につなげる狙いがあります。
さらに10年より先を考えながら研究する場合もありますが、残念ながら全ての研究結果が車両に搭載されるわけではありません。過去のモーターショーを振り返ると、新車としては出てこなかったユニークな提案が見つかるかもしれません。研究成果は、設計部門や製造部門と調整しながら新車への搭載が決まります。
新車に採用されなかった研究でも、一定の意味はあります!
自動車メーカーはあくまでも「完成車」メーカーであり、「モーター」「センサー」「電池」「ソフトウェア」「情報通信」など個々の部品は専門外です。これらの部品を量産していく細かなノウハウはほとんどありませんが、さまざまな分野で研究に取り組んでいます。自動車メーカーにとっては、最終的にサプライヤーから調達する部品であっても、理解を深めるために研究が必要です。
こうした個別の部品の研究を進めておかなければ、サプライヤーへ適切な指示ができなかったり、高い値段で部品を買わされたりするかもしれません。また、部品にトラブルがあったときにも対応できません。自分たちでノウハウを固めて、ゆくゆくはサプライヤーに任せるためにも、研究は必要なのです。
こうした研究を踏まえた上で、自動車メーカーは新車を企画、車両をデザインし、具体的な設計に移ります。また、この段階で車両開発コードが決定され、機密管理の点から車種名ではなく、社内ではこの開発コードでプロジェクトは進められます。サプライヤー各社は新車での採用を目指して自動車メーカーに売り込みをかけます。部品を受注するサプライヤーは、量産のおよそ2年前には決まります。
以前は、「サプライヤーは自動車メーカーから言われたものを作る」という時代もありましたが、今はそうではありません。サプライヤーから自動車メーカーに向けて提案する力も求められています。受注を勝ち取るためにも、各国の規制の動向はもちろん、自動運転やパワートレインの電動化などクルマのさまざまな将来を見据えながらサプライヤー自身も研究しなければなりません。
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