トヨタの人体モデルが無償公開、ユーザーによる改良、成果共有も可能に:設計開発ツール
トヨタ自動車は2020年6月16日、衝突事故での人体障害を解析するためのバーチャル人体モデル「THUMS(サムス : Total HUman Model for Safety)」を2021年1月から無償公開すると発表した。
トヨタ自動車は2020年6月16日、衝突事故での人体障害を解析するためのバーチャル人体モデル「THUMS(サムス : Total HUman Model for Safety)」を2021年1月から無償公開すると発表した。幅広いユーザーにTHUMSを使ってもらうことで、自動車の安全性能向上に貢献したいとしている。また、ユーザーがTHUMSに改良を加え、その成果を他のユーザーと共有できるようにしていく。
THUMSはトヨタ自動車と豊田中央研究所が1997年から開発してきた。2000年にバージョン1をリリースして以降、骨や脳、内臓、筋肉などモデルを増やすとともに、男性や女性、子どもなどさまざまな体格に対応している。衝突安全試験で使われるダミー人形と比べて、衝突による障害を詳細に解析することができる。また、実車での衝突安全試験とは異なり、シミュレーションでさまざまな衝突パターンを模した解析を繰り返し行うことが可能で、衝突安全性能に関する開発期間や開発費を大幅に抑えられる。
現在、国内外の自動車メーカーや部品メーカー、大学、研究機関など100以上の企業、団体がTHUMSを利用している。シートベルトやエアバッグ、事故時の歩行者の障害を軽減する車両構造など安全技術の研究開発で活用されているという。また、自動車アセスメントにおいても、将来のバーチャルな安全性能評価試験の導入計画の中でTHUMSの利用が検討されている。
無償公開のスタートに合わせて、JSOLや日本イーエスアイによるTHUMSのライセンス販売は2020年内に終了する。無償公開の対象となるのは、バージョン4、5、6だ。最新のバージョン6では内臓モデルに筋肉モデルが追加されており、モデルを切り替えずに筋肉の状態を考慮した乗員の姿勢変化と、衝突時の障害解析を同時に高い精度で行うことができる。
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